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『突然の秋』(ジム・ハリスン著、山本光伸訳、草思社)


c0077412_8262846.jpg『Farmer』(Jim Harrison)
ミシガン州北部の農場を舞台に、人生の秋を迎えようとしている男の揺れ動く心を描いた作品。主人公のジョセフは43歳で、幼いときの事故で片足に障害が残っているが、父の残した農場を経営する傍ら、長年近くの学校で教師として働いてきた。姉妹たちはみな家を離れ、現在は母親と二人暮らし。その母親は癌に冒されて余命幾ばくもない状態の中で、ジョセフのこれからを案じている。というのも、ジョセフは今、幼なじみのロザリーと、生徒のキャサリンという二人の女性とつき合っているからだ。ロザリーは、ジョセフがいずれは結婚するつもりでいて、周囲の人たちもそれを当然のことと思っている女性。ところがジョセフは町から転校してきた利発でかわいいキャサリンに惹きつけられる。そして、農場でキャサリンの馬を世話することになったことから、キャサリンとジョセフは急速に親しくなり、関係を持ってしまう。田舎に引きこもった生活のせいで女性との接触が乏しかったジョセフは、積極的で奔放なキャサリンに夢中になってしまい、ロザリーの存在も、教師という立場も、周囲の目も、母親の気遣いもすべて横に置いておいて、もうしばらくキャサリンと楽しみたい、と思うのだった。
この作品の魅力のひとつは、農場を取り囲む美しい自然が丁寧に、生き生きと描かれていることである。また、そこに暮らす人びとの描写も綿密で、特にドクターはこちらを主人公にしてもいいほどに魅力的な人物になっている。ドクターはジョセフの父親の代からの付き合いで、ジョセフや母親を医者として、友人として温かく見守り続ける存在である。そんなドクターが次のような台詞を吐いていて、思わずのけぞったあとに笑いがこみ上げてきた。
「わたしはきみの父親が好きだったし、あの傾きかけた家に勢ぞろいした亜麻色の髪のかわいい子どもたちを見るのも好きだった。それに女の子たちはとても頭がよかったから、わたしはカール(ジョセフの父親)に、この子たちはなんとしても大学まで行かせたい、わたしに援助させてくれと申し出た。しかしカールは断った。もう十分援助してもらっている、女の子は早く結婚したほうがいいんだからと。正真正銘、田舎者のたわごとだ。スウェーデン人てのは日本人と同じで、どいつもこいつも頭が固くて融通がきかん。そうは思わんかね?」(2012.10.9読了)
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by nishinayuu | 2012-12-07 08:27 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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