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『アルヴァとイルヴァ』(エドワード・ケアリー著、古屋美登里訳、文藝春秋)


c0077412_10453422.jpg『Alva & Irva』(Edward Carey)
物語の舞台はエントラーラという小さな町で、目次の前のページに町の旧市街の地図が載っている。大きな通りが3本あり、歌劇場や市民劇場、動物園、美術館などもあれば、大学や図書館もあり、インターナショナル・ワールド・ホテルもある。町外れにはセントラル駅があって市内はトロリーバスが縦横に走っている。大通りの間を埋め尽くす細かい通りも書き込まれた手の込んだ地図である。エントラーラをはじめとする地名から類推すると、ラテン語圏のどこかの国にある町だと思われるが、世界地図を探してもこの町は見つからない。なぜなら、エントラーラは架空の町だからだ。
物語は二人の語り手によって綴られる。一人はアルヴァ。中央便局の局長を祖父に持ち、その娘で郵便局員だったダリアと、同じく郵便局員だったライナスの間に生まれた双子の片割れである。アルヴァは双子の片割れであるイルヴァと自分の生い立ちを語り、二人がプラスティック粘土で作った町の精密な模型について語る。もう一人の語り手はアウグストゥス・ヒルクス。アルヴァの幼なじみで、長くカナダで暮らしたあと故郷に戻ってきた。ヒルクスはアルヴァの語る内容に注を書き加えたり、エントラーラを訪れる人びとのために観光案内をしたりする。
エントラーラという町の形と歴史を作り上げた作者は、そこに住むさまざまな人びとを、特にアルヴァとイルヴァという姉妹の人物像を念入りに作り上げ、彼女たちに粘土で町の模型を作らせる。それから作者は、恐ろしい巨大地震で町を破壊してしまうが、その際に双子の姉妹が作った町の模型は破壊を免れさせて、それをもとに町を再びこの世に甦らせるのである。作者の構築したこの幻想の町の在処を訳者は、東ヨーロッパよりの地中海近くにある小国の町、と想定しているが、もう少し具体的に場所を特定したいという思いに駆られる。(2012.9.26読了)
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by nishinayuu | 2012-11-22 10:44 | 読書ノート | Trackback | Comments(4)
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Commented by マリーゴールド at 2012-11-27 20:37 x
父と娘が精神的な共犯関係にあるのが、ある女性の登場で破綻していくという展開ではないでしょうか。
Commented by マリーゴールド at 2012-11-27 20:40 x
人はなぜ復元したがるのでしょうか。
Commented by nishinayuu at 2012-11-28 16:17
マリーゴールド様、いつもコメントありがとうございます。ところで、「父と娘が…」のコメントは『ハートストーン』へのコメントでしょうね。
Commented by マリーゴールド at 2012-11-28 19:42 x
そうです。間違えてしまいました。ごめんなさい!
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