『少女が消えた小道』(ジェイン・アダムズ著、加地美知子訳、早川書房)


c0077412_12155998.jpg『The Greenway』(Jane Adams)
HAYAKAWA POCKET MYSTERY BOOKS No.1649
物語はキャシーと夫のファーガス、友人のトマス夫妻がノーフォークを訪れるところから始まる。20年前のキャシーが10歳の夏、グリーンウエイという小道を2歳上のいとこ・スージーと通っていたとき、スージーが消えた。キャシーにはその出来事の前後の記憶が欠けており、そのためキャシーはスージーの母親であるおばからも自分の母親からも責められて、罪悪感に苦しんできた。悪夢にうなされ続けるキャシーの心の平安のためには、事件現場に立ち戻って事件に向き合う必要があると考えたファーガスは、友人夫婦の協力を得て、キャシーを20年ぶりにノーフォークに連れてきたのだった。「本気で忘れたいと思っているなら、ほかのことを話すのと同じように、あのことを話せるようにならなければね。どんなにひどいことだったにせよ、あれは一つの出来事だったんだ。全生涯のさまざまな出来事のなかのひとつに過ぎない。そんなふうに見られるようにならないとね」というファーガスのことばに、キャシーは「努力するわ」と約束する。そしてキャシーは気持ちを整理するために、事件のあったグリーンウエイにひとりで行ってみた。ずっと怯えていたその場所を一人で歩けたことで自信を持てた、とキャシーは高揚してファーガスに報告した。
ところが、キャシーがグリーンウエイにひとりで行った頃に、20年前と同様の事件が起こった。金髪でふっくらした顔の少女が失踪したのだ。キャシーの動揺は激しく、不可解な言動が見られるようになって、それがいよいよ人びとの疑いを深める。二つの失踪事件に深い関わりを持つ女として。
捜査を担当するマイク・クロフト警部は、キャシーのような精神的に不安定な人間と犯罪との関わりについて思いを巡らすが、決め手がない。マイクは強引に捜査を進めることはせずに、元警部のジョン・タイナンに助力を求める。ジョンは20年前にスージーの事件を担当し、未解決事件として処理された後も取り憑かれたように捜査を続け、昇進の道を自ら閉ざしてしまった人物である。こうして俄仕立てのコンビによる地道な捜査が始まる。
伝説や迷信のまつわる土地、そこで目撃されたよそ者らしい女、精神に異常を来しているかもしれないキャシー、などが不安をかきたてるなかで、人間味があって揺らぎのない二人の捜査官の存在が安心感を与える。不安感と安心感がバランスよく配合されたミステリーである。(2012.9.12読了)
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by nishinayuu | 2012-11-10 12:16 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)
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Commented by マリーゴールド at 2012-11-11 09:31 x
誘拐か殺人か。おもしろそうですね。
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