「ほっ」と。キャンペーン

『本を読む女』(林真理子著、新潮社)


c0077412_1055179.jpg読書会「かんあおい」2012年10月の課題図書。1998年にすでに取り上げられた本だが、10月の担当者のたっての希望で再度読むことになった。
山梨県の小さな町にある菓子商「小川屋」に生まれた万亀(まき)の半生記である。始まりは大正から昭和に変わって四日目の1926年12月25日。大正4(1915)年生まれの万亀は読書好きの小学生で、この日も祖父母が隠居部屋にしている倉の二階で『赤い鳥』に読みふけっていた。暮れの忙しいときに、とあきれる祖母に追い立てられるようにして母のもとに急ぐ。「小川屋」の家族は父の隆吉、母の芙美子、長男の秋次と四人の女の子――弥生、英子、朝美、万亀――という構成である。弥生は手先が器用、英子は母親譲りの大変な器量よし、朝美は歌がうまい、とそれぞれ特徴があるなかで、万亀はこれといった特徴のない平凡な少女だった。ただ、本をたくさん読んでいるせいで作文が得意で、ほかの勉強もよくできた。万亀に本の世界を教えてくれたのは窪谷に住む伯父で、4歳の万亀に会ったとき「こんな頭のいい子どもは見たことがない」と感心し、「マザーグース童話集」と「世界名作童話集」を買ってくれたのだった。
物語は本好きの万亀のそれからを、そのときどきに万亀が接した本に絡めて語っていく。小学生時代の「赤い鳥」、女学校時代の「花物語」(吉屋信子)、女専時代を経て北へ向かうときの「放浪記」(林芙美子)、故郷に戻って悶々と過ごした日々の「大地」(パール・バック)、出版社時代の苦い思い出である「オリムポスの果実」(田中英光)、結婚して大陸で過ごしたときの「万葉集」、再出発のきっかけをもたらした「斜陽」(太宰治)などが各章の章題として掲げられている。ほかにも万亀の接した数多の作品が全編を彩っており、それによって万亀という女性と彼女の生きた時代を生き生きと浮かび上がらせている。(2012.9.12読了)
[PR]
by nishinayuu | 2012-11-07 10:05 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://nishina.exblog.jp/tb/18667297
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
<< 『少女が消えた小道』(ジェイン... 『六月の長い一日』(ロジェ・グ... >>