『数学的にありえない 上』(アダム・ファウアー著、矢口誠訳、文藝春秋)


c0077412_10552415.jpg『Improbable』(Adam Fawer)
物語はニューヨークのとある地下カジノにおけるポーカー・ゲームの場面から始まる。「テキサス・ホールデム」形式のポーカー・ゲームが行われており、手札に2枚のAを持っている主人公のケインは、テーブルに1枚ずつカードが開かれていく毎に、素早く勝率を計算しながら勝負している。テーブルに4枚目のカードが開かれ、テーブル上のAが2枚になったとき、手役がAのフォーカードとなったケインは勝利を確信する。最後まで残った対戦相手がロイヤル・ストレート・フラッシュを出す確率はゼロも同然だったからだ。ケインは店主から1萬5千ドルの借金をして勝負に出た。ところが5枚目のカードで相手はそのありえないはずのロイヤル・ストレート・フラッシュを手にしたのだった。ゲームの途中から強烈な悪臭と吐き気に襲われていたケインは、その場で昏倒してしまう。
このあと物語はめまぐるしい展開を見せるのだが、サスペンスのストーリーを明かすわけにはいかないので、登場人物の紹介に留めることにする。
デイヴィッド・ケイン――大学で統計学を講義していたとき、TLE(側頭葉テンカン)の発作に襲われて退職。ギャンブル漬けの生活をしていたが、今回の勝負で高額の借金を抱えることになった。
ジャスパー・ケイン――デイヴィッドの双子の兄。統合失調症で入院していたが、退院後デイヴィッドのところに転がり込む。話し終えるときに最後のことばで韻を踏むクセがある。たとえば「事情を話してくれる気は-あるか-猿か-割るか-丸か?」という具合(訳者の腕の見せ所ですね)。
ナヴァ・ヴァナー――もとの名はタンジャ・アレクサンドロフ。12歳のとき飛行機事故で母と姉を失い、そのせいで父エゴールとの精神的繋がりも失った。飛行機事故がテロリストの仕業だと知って復讐を誓い、KGBのディミトリ・ザイツェフ、党の「スパイ学校」による特訓を受ける。そのあと極秘任務のために米国に送られ、党がアメリカに送り込んだロシア人夫婦の養女となり、ナヴァ・ヴァナーと改名。CIAに願書を送って訓練生として採用され、2年後には「アメリカのために敵を殺す人間」となっていた。
ドクター・トヴァスキー――謎の研究を続ける科学者。
ジュリア・パールマン――トヴァスキーの被験者。自分では愛人だと思いこんでいる。
ジェイムズ・フォーサイス――国家安全保障局〈科学技術研究所〉所長。
トミー・ダソーザ――ロトで2億4700万ドルを当てた男。
ドクター・クマール――ケインの主治医。小柄なインド人。ケインはこの医師のもとで、新しく開発中で統合失調症を起こす可能性が否定できない抗テンカン薬を試すことになる。

1970年生まれの著者によるデビュー作。16カ国あまりで出版されるベストセラーだという。下巻の惹句は「確率的にありえない連鎖反応。超論理的なドミノ倒し。前代未聞の物語のアクロバットが読者の呼吸を奪い、知的興奮をレッドゾーンに叩き込む。超絶ノンストップ・サスペンス、壮絶なる後半戦へ!」
(2012.8.26読了)
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by nishinayuu | 2012-10-20 10:55 | 読書ノート | Trackback | Comments(2)
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Commented by マリーゴールド at 2012-10-21 21:15 x
『数学的にありえない」というのは荒唐無稽だということですね。ありえない情況で馬鹿げた人達が繰り広げるどたばた喜劇のようですね。
Commented by nishinayuu at 2012-10-23 13:36
いえいえ、「ばかげた人たちが繰り広げるどたばた喜劇」ではないのですよ。とっても読み応えのあるミステリーですから、ぜひ読んでみてください。
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