『The Venetian Betrayal』(Steve Berry、Ballantine Books)

c0077412_18202336.jpgアレクサンダー大王にまつわる言い伝えをもとに展開する、野望を抱く者とそれを阻止しようとする側の攻防を描いたエンターテインメント。コペンハーゲン、アムステルダム、ハーグ、ハンブルク、ヴェネツィア、サマルカンド、と舞台はめまぐるしく移るが、各章の冒頭に場所が記されているので混乱することはない。時間に関しては、これも各章の冒頭に記してはあるが、話が前後したり同時進行したりする関係と、多分ヨーロッパとサマルカンドの時差の関係で、気をつけていてもわけがわからなくなってくる。ただ、同じ場所の場合はきちんと時間の流れにしたがって話が進んでいくので大きな混乱は起こらない。敵と味方、いい人と悪い人が比較的くっきり描き分けられているなかで、一人だけ白黒がめまぐるしく入れ替わる人物がいて、その経歴を考慮すると納得できなくもないが、話の展開のために無理やり作った人物像のようでもある。
主な登場人物は以下の通り。
コットン・マロン――もとアメリカ司法省のエージェント。ふだんは古書店をやっているが、ときどきかり出されて助っ人エージェントとなる。
カシオペア・ヴィット――マロンとともに闘うスペイン系ムスリムの若い女性。恋人の命を奪った者への復讐心に燃えている。
トルヴァルゼン――マロンの書店のオーナーで、マロンの強力な後援者。マロンのカシオペアへの気持ちも早くから察している。
イリーナ・ゾヴァスティーナ――カザフスタン共和国大統領、中央アジア連邦首相、ヴェネツィア同盟の評議員。第2のアレクサンダーを自負し、アレクサンダーの東征とは逆に、西征による世界制覇を目論む。強靱な肉体と精神を誇り、目的のためには手段を選ばない。
エンリコ・ヴィンセンティ――ヴィールス学者で製薬会社の大株主、ヴェネツィア同盟の評議員。生物兵器の開発などでゾヴァスティーナと協力関係にある。
ヴィクトル――旧東欧出身。ゾヴァスティーナの命を受け、グリーク・ファイアを自在に操ってエレファント・メダリオン探しに奔走する。
ステファニー――アメリカ司法省のエージェント。年齢のことを言われると不機嫌になる。

巻末に著者による解説がついていて、物語のキーとなる事項について、どれがフィクションでどれが事実かがきちんと記されている。読者サーヴィスなのか、読者教育なのか判然としないが、面白いので以下に記しておく。
フィクション――中央アジア連邦(ソ連崩壊後にゾヴァスティーナが6カ国をまとめて作ったもので、首都はサマルカンド)。エレファント・メダリオン(アレクサンダーの死後に作られたコインで、絵柄の騎士の衣の襞にギリシャ文字のZとHが刻まれている)。ヴェネツィア同盟。中央アジアにあるアレクサンダーの墓。AIDSを完全に直す治療薬。
事実――グリーク・ファイア(大火災を起こす仕掛け。主に船に対して使われた)。ブズカシのゲーム(ゾヴァスティーナが得意なゲーム。詰め物をした羊の皮で競う騎馬競技)。ZとHに該当するギリシャ文字(絵文字かマークのように見える)。(2012.7.14読了)


☆ブックオフで見つけて、作者も作品の傾向も知らないまま、とにかく安かったので買いました。マロン・シリーズの第3弾だということも、読み終わってから知りました。ダン・ブラウンのようなおどろおどろしくはなさそうなので、第1弾、第2弾も読んでもいいかな、と思っています。
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by nishinayuu | 2012-09-05 18:20 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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