『シェフとギャルソン、リストランテの夜』(ジョゼフ・トロピアーノ著、中村三千恵訳、二見書房)

c0077412_215473.jpg『Big Night』(Joseph Tropiano)
米国東部の小さな町で、プリモとセコンドの兄弟はトラットリア(家族経営の小規模レストラン)を営んでいる。2年前の1955年にイタリアからやって来た二人は、中古の店を買って修理したり磨いたり消毒したりしてきれいにした。店の名は「パラダイス」。テーブルが12卓に長椅子が2つ。テーブルには白いテーブルクロス、ナイフやフォークはステンレス、皿は厚手の白で、派手なものは何もないが、料理は本格的イタリア料理だ。それなのに、というかそれだからか、店はいつも閑散としている。スパゲッティ・ミートボールこそイタリア料理だと思っているアメリカ人の客には、この店のリゾットやらガルガネッリ・コン・ブロード(パスタ入りチキンスープ)やらは喜ばれないのだ。それなのに料理担当(シェフ)で職人気質のプリモは、頑としてミートボールを作ろうとしない。プリモは弟がアメリカで成功することばかり考えている、と苦々しく思っているのだ。一方、給仕担当(ギャルソン)のセコンドは客の好みに合わせた料理をプリモに作らせようとする。今のままでは早晩店がやっていけなくなることがわかっているからだ。
ところでパラダイスの近所にはもう一つのイタリアレストランがあって、客に受ける料理と派手な演出で大いに賑わっている。経営者はパスカルというコルシカ出身の男(つまりイタリア人ではない)。セコンドはプリモには内緒でこのパスカルに相談する。するとパスカルは、ジャズ界の大物ルイ・プリマが来週町に来るから、彼のためにパーティをやれ、そうすれば有名人が来る店として知られるようになる、とけしかける。ルイ・プリマにはパスカルが連絡しておく、と。セコンドはこの話に乗って、一夜のパーティに店の運命をかけることにする。こうして彼の奮闘が始まった――プリモを説得し、お金をかき集め、食材を大量に買い入れ、ワインも大量に仕入れて。セコンドの熱気は、プリモはもちろん恋人のフィリスやらプリモの行きつけの花屋のアンやら、周りの人びとを巻き込んでいく。
プリモ(一番目、つまり長男)とセコンド(二番目、つまり次男)の独白という形で進んでいくこの作品は、サンダンス映画祭で脚本賞を射止めた映画の原作だという。対照的な雰囲気の兄弟と彼らを囲む人びとの織りなす人間模様を眺めながら、数々のイタリア料理がその製作過程を含めて楽しめる作品である。(2012.6.15読了)
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by nishinayuu | 2012-08-09 21:56 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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