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『舟を編む』(三浦しをん著、光文社)


c0077412_10412021.jpg国語辞典の編集に携わる人びとの十数年にわたる日々を描いた物語。作中で編集作業が進められている辞書の名前は、ことばの大海原を渡る舟、という意味の「大渡海」。その舟を編む(編集する)のは次のような人たちだ。
荒木――辞書編集のベテラン。定年後も引き続き社外編集者として編集部に顔を出し、「大渡海」のために力を尽くす。
松本先生――「大渡海」の監修者で用例採集カードを片時も手放さない。「大渡海」に全身全霊で打ち込んでいるが、温厚な人柄なので周囲に圧迫感を与えることはない。
西岡――辞書編集者としての資質には欠けるお調子者だが、人付き合いや交渉ごとが得意な気配りの人。早い段階で辞書編集部から編集部へ転属になるが、気持ちはいつも「大渡海」に寄り添っている。
馬締――場が読めない変わり者の若者として登場し、やがて頼もしい辞書編集部主任として「大渡海」を完成に導く。「気長で、細かい作業を厭わず、ことばに耽溺し、しかも溺れきらず広い視野を持つ」辞書編集のために生まれてきたような男。
佐々木――非正規社員の中年女性。編集部のスケジュール、備品管理などになくてはならない人物。
岸辺――若い女性向けファッション雑誌から転属されてきた花粉症の若い女性。なぜここに?という疑問を克服し、徐々に編集部に居場所を見つけていく。
他にも馬締が部屋を借りている大家のおばあさん、その孫娘で料理人を目指している香具矢、料理屋「梅の実」の板前、西岡の恋人・麗美、「大渡海」用の紙を研究開発する製紙会社の宮本、猫のトラさん、などが登場する。そして、これらの人びとと気楽につき合っているうちに、いろいろな言葉の意味をはじめ、一つの言葉が辞書に載るまでの膨大な作業過程、辞書の善し悪しを見分ける目安、国語の辞書を公費で作ることの是非、などがいつの間にかお勉強できる仕組みになっている。「へのひと」なども、いかにも辞書編集部にはありそうなエピソードで、この作品の魅力の源が作者の緻密な取材にあることがうかがえる。(2012.5.28読了)

☆『月魚』や『まほろ駅前多田便利軒』に比べると、ちょっと期待はずれでした。読んだ人の話を聞いて期待しすぎたせいもあり、辞書や言葉の世界が古本や便利屋よりは馴染みのある世界だったせいもあるかもしれません。
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by nishinayuu | 2012-07-22 10:41 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)
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Commented by マリーゴールド at 2012-07-25 13:29 x
地味なテーマが小説になっているんですね。
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