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『城』(カフカ著、原田義人訳、筑摩書房)

『城』(カフカ著、原田義人訳、筑摩書房)_c0077412_9491883.jpg『Das Schloss』(Kafka)
カフカ(1883~1924)が残した未完の作品。訳者の原田義人は、加藤周一が『羊の歌』の「死別」の章でそのあまりにも早い死を嘆き悲しんだ友人その人である。
測量技師のKが、ある伯爵の領地にやってくる。伯爵の「城」に採用されたためだが、領地に入っても城は見えてこないし、城に行く道を尋ねても誰も教えてくれない。すぐにも「城」に行けるものと思っているKに人びとはあきれ、嫌悪さえ示す。やがてKにもわかってきたのだが、そもそも「城」は簡単に近づけるところではないのであって、「城」の役人たちに近づくには何段階もの手続きがいるのだった。さらに、Kの採用が決まったのはずいぶん前のことで、今では「城」は測量技師を必要としていない、ということも判明する。人びとはどうやらKがそのまま領地から去ることを望んでいるようなのだが、Kはわざわざ遠くからやってきたのだし、他には行くあてもないので、ここに止まることにする。そして倦まずたゆまず、あの手この手で役所のしかるべき人間に会う努力を続ける。そんなKの存在がさまざまな波紋を引き起こし、Kもまたその中で翻弄される。そしてKが「城」(役所の中枢部)に近づけない状態が続く中、また新たな展開が、と思われたところで物語は途切れている。
果たしてKは「城」に入り込めるのだろうか。おそらく入り込めないままで終わるのではないだろうか。その理由としては次の二つが考えられる。一つは「城」も「役所の中枢部」もやはり複雑怪奇で近づきがたいものだったから、というもの。もう一つは、「城」も「役所の中枢部」も堅固なものなどではなく、なにも実体のないものであり、そもそも誰もが畏敬する中枢部のクラムという人物も、カリスマ性とは無縁のただの役人でしかなかった、というものである。
主な登場人物は以下の通り。物語にはそれぞれのエピソードがとめどもなく盛り込まれている。
オルガとアマーリア――アマーリアが城の役人ソルディーニを拒んだために村八分にされた一家の姉妹。
バルナバス――オルガとアマーリアの兄。Kと役所を繋ぐ下っ端の連絡係。抜群の暗記力の持ち主。
ガルディーナ――宿屋兼酒場のおかみ。昔クラムから3度だけ呼ばれたことを支えにしている。
フリーダ――クラムの部屋つき女中だったが、Kと同棲を始める。Kの助手イェレミーアスと親しい。
イェレミーアスとアルトゥール――クラムの代理であるガーラターがKに付けた助手(実は見張り役)。
エルランガー――クラムの第1秘書の一人。
ビュルゲル――良心的な役人(?)。Kの件をなんとかしてみよう、と言う。
ベービー――宿屋の女中。フリーダの後釜になって張り切ったが、4日でフリーダに負ける。(2012.5.21読了)
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by nishinayuu | 2012-07-13 09:50 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

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