『この素晴らしき世界』(ペトル・ヤルホンスキー著、千野榮一・保川亜矢子・千野花江-共訳、集英社)

c0077412_10104572.jpg『Musíme si pomáhat』(Petr Jarchovský)
第二次世界大戦下、ナチスに占領されたチェコの小さな町を舞台に繰り広げられる人間ドラマ。
1943年のある昼下がり、ヨゼフ・チージェクは隣家の子どもたちの甲高い声で眠りから引きはがされる。病人の世話をしている修道女のようにそっと歩いている妻(マリエ・チーシュコヴァー。35歳くらい)に、いらいらをぶつけるが、彼は妻に子どもを授けてやれない自分にもいらだっているのだ。そこへホルスト・ブロハスカが、いつものようにソーセージやコーヒーなどの貢ぎ物を持って現れる。「半分チェコ人」のブロハスカは、保護領下に入って以来、かつての上司であるチージェクに反ナチス的な言動はないかと、監視を兼ねて足繁くやって来る。彼が、隙あらばマリエをものにしようとしていることを、夫婦のどちらも知っている。この日、ブロハスカは向かいの家に明日、ドイツの退役軍人一家が入居するという情報をもたらす。その夜、チージェクはかつてユダヤ人のヴィーネル一家が住んでいた向かいの家に忍び込む。かつての上司だったヴィーネルの家にはチージェクが手がけた秘密の金庫があった。チージェクは新しい住人が来る前に、ヴィーネル家の財産を確保しようと考えたのだ。チージェクがその作業をしているとき、家の中に潜んでいた青年と出くわした。ヴィーネル家の親戚のダヴィトだった。チージェクはダヴィトを家に連れてくる。幸いチージェク家のクロゼットの裏に隠し部屋があった。長さ3メートル、幅1メートルのこの狭い空間に、チージェクとマリエはユダヤ人のダヴィトを匿うことにしたのだった。

読み始めてすぐ、なんだか舞台劇を見ているような、あるいはシナリオを読んでいるような、と思ったのだが、読後に作者紹介やあとがきを見て納得した。作者のペトル・ヤルホスキーは音楽映画アカデミーの映画・テレビ学部を卒業し、映画の脚本家として知られているという。どおりで台詞とト書きからなるシナリオのような書き方になっているわけだ。緊張感溢れる展開の随所に笑いどころも盛り込んであり、観客サービス満点の作品といえる。この作品は後に映画化されたという。(2012.4.27読了)
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by nishinayuu | 2012-06-18 10:11 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)
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Commented by マリーゴールド at 2012-06-20 10:27 x
いろいろな展開が考えられておもしろそうですね。一つの予想ですが、ダヴィトを助けるために秘密の金庫をブロハスカに渡してしまう。敗戦と同時にその中身は無価値になるというのもありますね。
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