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『真昼のふくろう』(レオナルド・シャーシャ著、竹山博英訳、朝日新聞社)


c0077412_15131263.jpg『Il giorno della civetta』(Leonardo Sciascia)
パレルモ出身の作家が描いたシチリアの世界。いわゆるシチリア・マフィアとはどういうものかがわかって興味深い。
ある朝、ガリバルディ広場とカヴール街が交わる角から、建設協同組合の組合長コラスベルナが狙撃された。狙撃者はカヴール街を通って逃げたと考えられる。広場には乗客50人ほどを載せたパレルモ行きの始発バスが止まっていたからだ。しかし憲兵が来たとき、バスに残っていたのは運転手と車掌だけだった。みんな関わり合うのを恐れて逃げ出していたのだ。
憲兵隊のベッローディ大尉の指揮で捜査が進められる。コラスベルナは建築工事の入札に関して土地の有力者の意向に従わなかったために暗殺されたらしい。また、カヴール街に住む果樹剪定人のニコローシが事件の日から行方不明になっているが、彼は狙撃があった時刻にフォンダゲッロ地区に出かけようとしていて、走り込んできた狙撃者を目撃していたことがわかる。忘れ物に気づいて一度家に戻ったニコローシは妻に狙撃者のあだ名を告げていた。そのあだ名ジッキネッタから手練れの犯罪者ディエゴ・マルキーカが割り出され、ピーツーコ、ドン・マリアーノ・マレーナ、さらには下院議員のリヴィーニ、大臣のマンクーソという連鎖が見えてくる。すべて、ベッローディの沈着冷静な捜査のおかげである。北イタリアのパルマ出身で、共和主義者の家系に生まれた彼は、レジスタンス=革命運動に参加した経験を持ち、イタリア共和国の法に仕える自分の持つ権威を注意深く、正確に、確実に扱うべき道具と考えていた。そんな理性の人であるベッローディと、事件の黒幕であるドン・マリアーノとの対決は、イタリア共和国の法の正義とシチリア社会の正義の対決だった。しかしシチリアの強烈な陽光の中で、理知の人ベッローディは自分が真昼のふくろうでしかないことを思い知ることになる。

探偵小説風の展開になっているのでどんどん読み進められるのだが、イタリア語の(つまりカタカナの)人名、地名のオンパレードでややこしいことこの上ない。さらにアルファベットのPとBで示される二つの村には憲兵詰め所があり、C市には憲兵中隊があって、その三箇所を大尉やら准尉やら曹長やらが行ったりきたりする。緻密な頭脳の持ち主なら別に問題はないだろうが、そうでない場合はメモをとるとか、間を開けずに一気に読むとかしないと混乱すること間違いなし。nishinaはメモをとりながら読んだのだが、それでも一箇所、P村と書いてあるけれどB村ではないのか、と納得できない部分がある。それはともかく、いい読書ができた、という満足感をもって本を閉じた。(2012.4.16読了)
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by nishinayuu | 2012-06-03 15:13 | 読書ノート | Trackback | Comments(2)
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Commented by マリーゴールド at 2012-06-04 01:10 x
現在の話ですか、過去の話ですか。
Commented by nishinayuu at 2012-06-06 16:27
イタリアが共和制に移行したのが1946年、『真昼のふくろう』の発表が1961年ですから、その間のシチリア社会の話ということになります。
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