「ほっ」と。キャンペーン

『列車に乗った男』(クロード・クロッツ著、藤丘樹実訳、アーティストハウス)


c0077412_105115.jpg『L’Homme du Train』(Claude Klotz)
この作品はパトリス・ルコントの監督で映画化されており、主役の二人はジョニー・アリディとジャン・ロシュフォールが演じている。というより、そもそもはじめからこの二人の姿が頭にあった監督が、ストーリーをクロード・クロッツに依頼したのだという。翻訳書のカヴァーイラストも二人にそっくりに描かれているので、この二人のイメージを重ねて物語を読み進めることになる。
初冬の夕暮れ時、フランスの田舎町に列車が入ってくる。寂れた小さな駅に降り立ったのは、カウボーイ風のブーツとコートに身を固めた流れ者のミラン。この町で仲間と一仕事することになっているが、ホテルに向かう前に薬局に立ち寄ることにする。頭痛を抑えるアスピリンを買うために。
この寂しい町に、贅沢な調度や装飾品がびっしり詰まった古い屋敷がある。住人は元フランス語教師のマネスキエ。町が次第に寂れていくのを見ながら歳を重ねてきた。夕刻、心臓のあたりに軽い疼きがきたので、薬局に向かう。切らしてしまったニトロを買うために。
薬局の親爺が店を閉める18時の直前だった。ミランがドアから入ってきた瞬間、マネスキエの頭には「この男、スクリーンから抜け出してきたな」ということばが浮かんだ。夕暮れをバックに、苦痛と混沌を表情に湛え、古い映画から抜け出してきた男……。それが、ミランを見たときの第一印象だった。店をあとにした二人は、一緒にマネスキエの家に向かう。ミランが薬局で渡されたアスピリンが水なしでは飲めないタイプだったとわかり、マネスキエが自分でも思いがけないことに家に誘ってしまったのだ。ミランはマネスキエの部屋に居心地のよさ、安らぎ、調和を感じ、「ここには過去がある。歴史がある」となんとか言葉にまとめた。そして「でも退屈ですよ」というマネスキエに「時には退屈もしてみたかった」と応える。マネスキエの方はカウボーイ姿の無口な男を見ながら、「私は無口な行きずりの男になりたかった」と言う。
ミランの泊まる予定だったホテルは休業中だった。それでミランはとって返してマネスキエの家の呼び鈴を押す。こうしてミランは「仕事」のある金曜日までの4日間、マネスキエの屋敷で寝泊まりすることになる。金曜日はマネスキエにも大事な予定があった。この日、正反対の人生を送ってきた二人は奇しくも同じ運命に出遭い、それから再び正反対の人生へと踏み出すことになる。
すかっとした後味の男の友情の物語。ちょっとうまく行きすぎの感はあるが。(2012.4.1読了)
[PR]
by nishinayuu | 2012-05-19 10:51 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://nishina.exblog.jp/tb/17984721
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
<< 『金曜日のアンナ〈不思議なこと... 『トンケは来ないかもしれない』... >>