「ほっ」と。キャンペーン

『逃れの森の魔女』(ドナ・ジョー・ナポリ著、金原瑞人・久慈美貴共訳、青山出版社)

c0077412_9401179.jpg『The Magic Circle』Donna Jo Napoli。
グリム童話「ヘンゼルとグレーテル」のパロディ作品である。グリム童話は子どもたちが知恵を働かせて魔女を出し抜き、無事に家に帰るという賢い子どもたちを主人公としたお話だが、この作品の主人公は魔女。邪悪な魔女がそう簡単に幼い子どもたちに騙されるものだろうか、という疑問に一つの答えを提示する、哀れで感動的な物語となっており、幻想的で怪しい雰囲気の装丁と装画が物語を引き立てている。
さて主人公は、容姿は醜かったが神を信じる敬虔な女性で、医術、特に産婆としての腕で人びとに重宝がられていた。美しく生まれついた娘アーザをかわいがり、アーザのために一生懸命生きていた。そんな彼女に近所に住む賢しい女バーラが、病気をもたらす悪魔と戦うためには魔法陣の中に入って医療を行えばよい、と知恵をつける。バーラは彼女がもらう治療代の分け前が目当てなのだ。こうして彼女はただの治療師から、悪魔を呼び出して駆け引きをする女魔術師となった。しかしあるとき彼女は、悪魔の仕掛けた罠にはまって魔法陣から手を出したために、悪魔の世界に引き込まれてしまう。こうして彼女は魔術師から魔女になってしまったのだ。魔女であることを人びとに知られてしまった彼女は、火あぶりの刑に処せられるが、魔女だから簡単に死んだりはしない。燃えさかる火の中から秘かに抜け出した彼女は、娘のアーザに害が及ばないように、遠くの森の奥に逃れる。そこでアーザの好きだったお菓子作りに精を出し、家全体をお菓子で飾って暮らしていたところへ子どもたちが現れ、だれもが知っている結末へとつながっていく。
☆この作品ではヘンゼルがほんとうに幼くて頼りない弟、グレーテルがしっかり者の姉という設定になっている。訳者のあとがきによると、グリム童話ではどちらが年上かは明記されていないという。ところで訳者は「日本ではヘンゼルが妹でグレーテルが兄という設定が圧倒的に多いが……」と書いているが、これは勘違い、もしくは校正ミスであろう。「(2012.2.16読了)
[PR]
by nishinayuu | 2012-04-09 09:40 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://nishina.exblog.jp/tb/17794987
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
<< 『メイの天使』(メルヴィン・バ... 『ブラームスはお好き』(フラン... >>