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『ブラームスはお好き』(フランソワーズ・サガン著、朝吹登水子訳、新潮社)


『ブラームスはお好き』(フランソワーズ・サガン著、朝吹登水子訳、新潮社)_c0077412_22445963.jpgAimez-Vous Brahms……。1959年、サガン24歳のときの作品で、夫のギイ・シェレールに献呈されているが、ギイとはその後離婚している。
装飾デザイナーとして働くポールは39歳で、若い女の段階から『いつまでも、お若い』といわれる段階に入るのが気に入らない。15年近く恋人関係を続けているロジェは運輸会社を経営していて、港で貨物トラックを捌くといった、半ば肉体労働者のような仕事もしている。お互いに束縛しないという暗黙の了解があって、それをいいことにロジェは女遊びにうつつを抜かしており、ロジェ一筋のポールは、虚しい期待を抱きながらロジェを待つ生活に慣らされている。そんなある日、室内装飾の仕事でヴァン・デン・ベッシ夫人の邸宅に出向いて夫人を待っていると、「だぶだぶのガウンを着て、頭をくしゃくしゃにし、すばらしく美男子に見えた」若い男が現れる。夫人のいちばん最近のツバメかとポールが思ったこの青年は、夫人の息子のシモンだった。
ポールに一目惚れしたシモンは、全身全霊でポールを愛し始める。14歳も年下のシモンを相手にする気はなかったポールだが、本気で自分を愛してくれるシモンに次第に心を開いていく。ポールにとって、当てにできないロジェと違って、いつでも自分を最優先に考え、自分のために尽くしてくれるシモンという存在は心地よかった。やがてシモンはポールの部屋に居着くようになり、ロジェの影は次第に遠のいていくかに見えたが……。
誠実とは言えないけれども男っぽくて頼りになるロジェと、一途に愛してくれてはいるけれどもこちらに頼り切っているようなシモン。そんな二人の男の間で揺れ動く「若くはない女」の微妙な心情を、24歳という若さのサガンが見事に捉えている。
さて、この作品は1961年に映画化されていて、ポールをイングリッド・バーグマン(当時46歳)、ロジェをイヴ・モンタン(40歳)、シモンをアンソニー・パーキンス(29歳)が演じている。この時のアンソニー・パーキンスの印象は実に強烈だった。「あまりに美男子すぎて本当とは思われないくらい」で、「あまりにも生活に甘やかされすぎた人のような、だが、どうやら親譲りのものらしいぎこちなさ」を持ったシモンは、パーキンスのために作られた人物なのではないかと思えるくらいのはまり役だった。また、外国人の名前に疎かった弟がイモ・ブンタンと言ったので家中で大いに受けたイヴ・モンタンも、イモっぽいロジェにぴったりだったという記憶がある。シモンの背中越しにポールを見つめたときの切なそうな表情もとてもよかった。それなのにポールについては「中年のおばさん女優」だったとしか覚えていない。(2012.2.15読了)
Commented by マリーゴールド at 2012-04-08 10:11 x
小説も映画も見たくなりますね。
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by nishinayuu | 2012-04-06 22:45 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)

読書と韓国語学習の備忘録です。


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