「ほっ」と。キャンペーン

『南瓜の花が咲いたとき』(ドラゴスラヴ・ミハイロヴィッチ著、山崎洋一訳、未知谷)


c0077412_1049216.jpgセルビア生まれの作者が1968年に発表した作品で、原題はДрагославМихаиловић(最後の文字は間違っているかも知れない)。
物語は24章からなり、1章と24章が現在、2章から23章までが過去の出来事、という構成になっている。
主人公のリューバは12年前に故郷を出て、今はスウェーデンのエステルスンドの町に住み、スウェーデン人の妻と妻の連れ子である男の子といっしょに暮らしている。工場で働き、そこのボクシング部で指導し、ユーゴスラビアからやって来る人たちの手助けもしており、すっかりこの町になじんでいるが、ときどきむしょうに故郷が恋しくなってユーゴスラヴィアへ車を飛ばしてしまう。そしてオーストリアとの国境を越えて少し先まで行く。しかし、ベオグラードにはどうしても行けないまま、引き返してしまう。そこにはリューバの嵐のような青春時代の思い出が生々しく残っているからだ。
2章~23章には、ユーゴがナチス・ドイツの占領下にあった1942年あたりから始まり、新しいユーゴスラヴィアの誕生、コミンフォルムからの追放(1948)を経てリューバが故郷をあとにするまでが描かれている。リューバはベオグラードの下町ドゥシャノヴァッツに、両親と兄、妹といっしょに住んでいた。兄はナチス・ドイツからの解放を目指してパルチザンとなり、家をあとにする。リューバは町の無法者アパシュ
の暴力に惹きつけられ、強くなるためにボクシングに熱中する。しかしユーゴスラヴィアがコミンフォルムから追放されると、兄はソ連派として投獄され、一家は当局ににらまれるようになる。リューバは懲罰的に軍に入れられ、両親は老い衰えていく。そして一家の希望の星だった妹の死によってリューバの家族は完全に崩壊する。
セルビアでは、「南瓜の花が咲くときに肺病患者が死ぬ」と言われているという。作中では肺病患者となったアパシュが南瓜の花の時期のあとに死ぬことになる。そのアパシュが、瀕死の状態にあってもなおリューバを嘲るように告げる。(おまえの妹が死んだときも南瓜の花が)「森の裏手にあったんだ。あのトウモロコシ畠のなかに」と。(2012.1.31読了)
[PR]
by nishinayuu | 2012-03-24 10:49 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://nishina.exblog.jp/tb/17714336
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
<< 『チェロキー』(ジャン・エシュ... 『時をこえる風』(フレデリック... >>