『マチルダの小さな宇宙』(ヴィクター・ロダート著、駒月雅子訳、早川書房)

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脚本家、詩人である作者が2009年に発表した最初の小説作品で、原題のMathilda Savitchは主人公の少女の名前である。13歳という微妙な年齢の少女の、不安と希望が交錯し、ときには迷走したり暴走したりする世界が、温かく優しい目で描かれている。さらに、ミステリー的な展開もあって楽しめる。

マチルダは「毎日がだるくて、つまんなくて、うんざり」している13歳の少女。パパもママも陰気な顔で本ばかり読んでいる。それに、昔はとびきりの美人だったママが、今はお酒と煙草がはなせなくなり、いつも泣きはらしたような顔をしている。マチルダにうるさく指図はするが、本気でマチルダのことを心配しているとは思えない。どこか上の空の感じなのだ。パパはマチルダを見つめようとするけれど、昔のように上手にできず、目が泳いでしまう。両親がこんなふうになったのは、1年前にマチルダの姉のヘレーンが死んでしまってからだ。だれかに線路に突き落とされて、列車にひかれて死んだのだ。それ以来、家族みんなでヘレーンの思い出を語ることはなく、ヘレーンの歌声が入ったテープもママがどこかに隠してしまった。マチルダはマチルダで、ヘレーンのノートや手紙、電子メールのアドレスなどを隠し持っている。
子どもから大人へと変わっていく時期のマチルダは、自分の身体の変化、友人たちとの関係、テロに脅かされる社会など、さまざまな不安の中にいる。その中でマチルダの心にいちばん重くのしかかっているのがヘレーンの死だ。マチルダは姉を死に追いやった「犯人」を突き止めようと決心する。メーラーを開くためのパスワードをやっとのことで探り当てたマチルダは、ヘレーンの死の鍵を握ると思われる、ヘレーンの最後の通信相手に、ヘレーンになりすましてメールを送信する。(2012.1.18読了)
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by nishinayuu | 2012-03-18 10:29 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)
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Commented by マリーゴールド at 2012-03-22 13:44 x
謎解きは主人公と一体感をもって読者も話の展開の中に入り込めるので、いつもおもしろいですね。
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