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『ブリーダ』(パウロ・コエーリョ著、木下眞穗訳、角川書店)

c0077412_18133610.jpg原題はBrida。コエーリョの3作目の作品で、出版は1990年。
ブリーダは21歳。アイルランドのダブリンに住み、貿易会社でアルバイトをしながら大学に通っている。幼い頃から魔術的なものに惹かれていたブリーダは、ある夏の日、一人の男を訪ねてダブリンから150キロも離れた村にやってくる。自分の内なる力を見出したいと願っていたブリーダは、やっと訪ね当てたこの〈フォークの魔術師〉に「魔術を習いたいんです」と告げる。目の前に現れたブリーダを見て魔術師は驚く。彼女こそは彼の探し求めていた「分身」だったからだ。しかし彼はこの時点ではブリーダにそのことを告げない。ブリーダの師として、まずブリーダに闇夜を体験させ、暗闇を信頼することこそが信仰だということを、そして賢者への道は誤りを犯すことを恐れずに闇夜を進むことだと教える。
ブリーダはさらに新しい師を求めてダブリン市内の中心部にある書店を訪ねる。オカルティズムに関する文献をそろえたこの書店の店主から一つの住所を手に入れたブリーダは、19世紀のロマンの漂う一角にある古い建物の前に立つ。そこの3階に住む女性ウィッカがブリーダのもうひとりの師となる。ウィッカの導きでブリーダは、自分が転生を繰り返して現在に至った魔女であることを自覚するようになり、世界や人間に対する理解を深めていく。そしてブリーダは、恋人のローレンスとフォークの魔術師がふたりともに自分の「分身」であることに気づいてとまどう。やがて季節は移り、ついにブリーダの魔女としてのイニシエーションのときである春分の日がやってくる。

かなり乱暴にまとめてしまえば、働きながら学び、恋をしている若い女性が、魔術、ケルトの伝説、キリスト教の伝説などの神秘的な世界に触れながら成長していく物語、ということになろうか。コエーリョが好きだというアラフォーの女性が一押しの作品だというので読んでみたのだが、残念ながら私は最後まで物語の世界に入り込むことができなかった。そもそもブリーダをはじめとして登場人物たちが明確な姿で浮かび上がってこない。それに、日常世界と非日常世界の境を越えるときや、非日常の世界にいるときの描写が、なんだか説明的で、異世界に入り込む感動が味わえない。さらに言えば、イニシエーションとか、サバトといったことばが、あまりに日常的な日本語で綴られている地の文の中では変に浮いてしまうため、全体的に流れがぎこちなく、詩情が感じられないのだ。というわけで私がコエーリョ作品に順位を付けるとしたら「アルケミスト」「11分間」「ベロニカは死ぬことにした」「ザーヒル」「ブリーダ」となり(なぜか読んだ順になっているのだが)、今のところは「アルケミスト」が一押しの作品である。(2012.1.7読了)
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by nishinayuu | 2012-03-04 18:13 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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