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『浮石寺』(申京淑著、文学思想社)


c0077412_1561361.jpg『부석사』(신경숙著、문학시상사)
2001年度第25回イサン賞の受賞作。当時の韓国語講座の先生に『イサン文学賞受賞作品集』をいただいて、辞書を引きながら読んだのが申京淑との、そして『浮石寺』との最初の出会いだった。そのあと2003年の秋に、友人と二人でじっくり日本語を練りながら読んだ。というわけで今回は三度目の『浮石寺』である。繊細かつ鮮明な人間描写、ロード・ムーヴィーのような展開と幻想的な結末――読むたびに魅了される作品である。
同じマンション(作中ではオフィステルと呼ばれている)に住む男女。それぞれつき合っていた恋人から裏切られたことが心に大きな傷を残している。男はさらに仕事仲間の裏切りにもあって、現在休職中である。人と会うのを避けるように、近くの山を歩くことを習慣にしている女はある時、山の畑で男を見かける。男もひとりでよくその山を歩いているのだが、ついでに畑の作物をちょっと失敬するのが秘かな楽しみになっていたのだ。女が男の野菜泥棒につき合ったことから二人は言葉を交わすようになり、そうなってみると二人はそれまでもちょっとした接触があったことに思い当たるのだった。それでも、それぞれ人間不信に陥っている二人は、それ以上相手に近づくつもりはなかった。そんな二人が、1月1日にいっしょに車で浮石寺を目指すことになる。男には裏切り者の同僚から、女には電撃的に他の女性と結婚してしまったモトカレから、1月1日に会いたいという連絡があったからだ。二人には、自分を裏切った人間とは会いたくない、という共通の思いがあり、会えない口実としてとにかく誰かと出かける約束をする必要があったのだ。こうして二人は女の車で出発する。ほんの思いつきで決めた目的地である浮石寺に向かって。(2011.12.24読了)

☆浮石寺の思い出――2003年に勉強につき合ってくれた友人もいたくこの作品が気に入ったようで、2005年の秋にもうひとりの友人と3人で韓国の文化遺産を訪ねる旅を計画したとき、まず候補にあがった訪問先が浮石寺でした。11/6にソウルで1泊。翌日の11/7、教保文庫で数冊ずつ目当ての本を買い込んだあと、電車で豊基まで行き、そこからタクシーで浮石寺に近いホテルに投宿しました。タクシー運転手はなんとも素朴で感じのいいおじさんでした。ホテルは古ぼけた安宿でしたが、オーナーの息子らしき若者はイ・ビョンホンばりの笑顔で自動販売機のコーヒーをおごってくれました。翌日の11/8、前日のタクシー運転手を呼んで憧れの浮石寺へ。銀杏の落ち葉で黄金色に染まった道を踏みしめ、安養門から小白山脈を振り返り、無量壽殿のエンタシスの柱に凭れ、伝説の浮き石の隙間も覗いてみました。真っ青な空の下、『私の文化遺産踏査記』の記述を思い浮かべながら、『浮石寺』のふたりがたどり着けなかった浮石寺を存分に楽しんだのでした。
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by nishinayuu | 2012-02-21 15:08 | 読書ノート | Trackback | Comments(2)
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Commented by マリーゴールド at 2012-02-21 21:29 x
この作家は「お母さん、お願い」を書いた人ですよね。おもしろそうですね。旅行にも行ってみたいです。
Commented by nishinayuu at 2012-02-22 00:18
『母さんをお願い』の他にブログに6冊upしてあります。この人の作品の特徴は文章の流れが自然で読みやすいことでしょうか。今のところ韓国の作家の中でいちばん気に入っています。
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