『美術愛好家の陳列室』(ジョルジュ・ペレック著、塩塚秀一郎訳、水声社)


c0077412_8352245.jpg原題はUn Cabinet d’amateur。原題の意味するものは「絵画コレクションの陳列室(美術愛好家の陳列室)」であり、また、そうしたコレクションを描いた絵画ジャンル「ギャラリー画」でもある。
この作品の冒頭で一枚の絵が紹介されるが、その絵というのが美術愛好家の陳列室を描いたギャラリー画で、絵のタイトルは『美術愛好家の陳列室』である。つまりこの『美術愛好家の陳列室』という本は、美術愛好家の陳列室を描いた『美術愛好家の陳列室』という絵画を巡る物語、ということになる(複雑!)。主要な登場人物は画家のキュルツ、美術愛好家のラフケ、美術研究家のレスター・ノヴァク、ラフケの甥のウンベール・ラフケらである。『美術愛好家の陳列室』という絵は、美術愛好家でありここに描かれた陳列室の主であるラフケが、キュルツに発注して描かせたものであって、絵の中には陳列室内のたくさんの絵と、それを眺めるラフケの姿が描き込まれている。その陳列室に並べられている数々の絵の内容、作者、描かれた事情、収集されたいきさつ、収集時の買値、競売に出されて落札されたときの値段などなど、実に細かい解説の部分が本書の大部分を占めている。多くは聞いたこともない画家、見たこともない絵の解説だが、ときどきよく知られた画家の名や有名な絵も出てくるので、それを楽しみに読み進んでいくと、最後のほうになって二通りの驚くべき事実が明かされる。一つは取り上げられている絵に関する驚くべき事実で、これは途中で何となく察しがつくが、もう一つはこの物語全体に関する驚くべき事実で、「やられた!」と悔しがる読者も出てきそうだ。作者の凝った趣向を味わい楽しむための作品と言える。(2011.10.21読了)
[PR]
by nishinayuu | 2012-01-03 08:35 | 読書ノート | Trackback | Comments(2)
トラックバックURL : http://nishina.exblog.jp/tb/17274215
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
Commented by pegopa26 at 2012-01-05 18:56
初めまして。
생 텍쥐페리を調べていて「韓国語外来語辞典」という素晴らしいサイトを知りました。
フランスの作家さんなんですね。
助かりました!
早速、こちらのブログをお気に入り登録させて頂きました。
ありがとうございました。
Commented by nishinayuu at 2012-01-06 16:28
pegopa様、はじめまして。pegopaさんのブログはまるで研究論文ですね。ほとんど他所様のブログを訪問しないので、同じexblog仲間にこんなにすばらしいブログがあることを初めて知りました。上からずっと読ませていただきまして、どれもこれも勉強になりましたが、特に「椅子に依りかかって意見する医者」のところが今の私にはいちばんありがたいヒントでした。さっそくお気に入りに登録し、これからも訪問させていただこうと思います。
<< 『バラの構図』(K.M.ペイト... 映画鑑賞ノート13  >>