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『プロトコル』(平山瑞穂著、実業之日本社)


c0077412_13492047.jpgこの本は自分で選んだわけではなく、たまたま手もとに転がり込んできたもの。読んでみたら意外におもしろかったが、内容の紹介は本のカバーにあるもので代用することにして、疑問点と気に入った点を挙げる。
先ずカバーにある紹介文は――ネット通販会社に勤めるOLの絡み合う、仕事・家庭・恋愛事情!膨大な文字列の中から特定の法則性を見つけ出す特異な能力を持つ反面、生真面目すぎて人間関係には不器用な有村ちさと。社内の派閥争いや個人情報漏洩事件に巻き込まれ、仕事や家族、恋人に翻弄されながら彼女が手に入れるものとは?コンピュータ間のデータ授受の約束事を示す用語「プロトコル」を、人間同士の関係へと昇華させて描くキャラ立ち系・neoお仕事小説。
疑問点は三つある。一つ目は、顧客ごとの信用リスクレベルを判定するという商品を売り込みにきた男に、「弊社の商品の精度がいかに高いかを検証するために御社の顧客データと照合したい」と言われたからといって、膨大な個人情報をコピーして渡したりするものだろうか、という点だ。しかも相手は飛び込みで売り込みに来た初対面の男である。有村ちさとがいくら疲労困憊していたからといって、そんな相手に5万人分の個人データをコピーして渡すなどということはあり得ないのではないか。有村ちさとに相談された上司の花守部長が簡単に許可してしまうのもおかしい。ほんとうにこんな会社がある?
疑問点の二つ目は、勤務時間のかなりの時間をいかがわしいサイトを見るのに使っていた景山次長をはじめ、有村ちさとと同じ課の社員たちなど、この会社にはきちんと仕事をしていない、あるいは仕事ができない社員がやたらに多いようなのだが、それでも会社がおかしくならないのはなぜなのだろうか、という点だ。ほんとうにこんな会社がある?
疑問点の三つ目は、「作中に登場する団体名として実在する団体と同じ名を使ってしまった、しかも二つも」と作者があとがきで述べている点だ。「二つの名称は作品それ自体の趣向と切っても切れない関係にあるので、実在するとわかってからも変更は困難だった」ということだが、ほんとうにそんなことがある?もしかして、この部分もフィクション?あるいはほんとうにそんな名前の会社が実在するとしたら、もしかしてそれらの会社の宣伝を兼ねて使った?などとあれこれ考えてしまった。
気に入った点は、人物描写が念入りなこと。主要人物はもちろん、話の本筋にはあまり関係のない人物もていねいにくっきりと描かれていることである。中でも興味深いのは有村ちさとのお父さん。普通に考えればとても困ったお父さんなのだが、家族を愛し、家族に愛されているお父さんである。有村家のプロトコルを作ったのはこのお父さんで、お母さんもちさともそのプロトコルを通してお父さんを深く理解しているのだ。(2011.9.21読了)
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by nishinayuu | 2011-12-09 13:52 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)
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Commented by 明郎 at 2012-06-28 23:39 x
不安定な性格の作者が書くとそうなるのか??

作家の平山さんについて、ちょっとネットで調べてみたら、
おもしろい記事を見つけました。
http://www.birthday-energy.co.jp/

平山さんの性格上、闘争的なのに精神性を重視したりとか
いろいろ矛盾を抱えているとか。
でも、大人になりきれないとかいわれててしまってるし、
イロイロと変わった人なのかも知れません。

新作『大人になりきれない』も出たみたいですが、こちらは
どうなってるのか・・・。読んでみたいと思います。
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