『失われた時を求めて 10』(マルセル・プルースト著、鈴木道彦訳、集英社)


c0077412_9473372.jpg第5編「囚われの女」のⅡが収録された巻。
冒頭は前巻からの続きで、語り手がシャルリュス男爵、ブリショとともにヴェルデュラン夫妻の邸に向かう場面である。この日の夜会の主催者であるシャルリュス男爵は、お気に入りのモレルを小説家としても売り出そうと目論んで張り切っている。一方、会場を提供したヴェルデュラン夫人は、シャルリュス男爵を利用して貴族社会の人びとと近づきになることを期待している。いよいよこの日の呼び物であるモレルらによるヴァントゥイユの未発表作品の演奏が始まる。アルベルチーヌとヴァントゥイユ嬢がよからぬ関係にあることを疑っている語り手は、ヴァントゥイユの七重奏曲に聴き入りながら、あれこれと思いを巡らす。さて、夜会が果てると招待客たちは、一言言葉を交わそうとシャルリュス男爵の前に列を作る。夜会の始めから邸の主夫妻を無視して傍若無人に振る舞っていたシャルリュス男爵は、最後まで邸の主夫妻の立場を顧みることをしない。貴族社会の人びとも、邸の主夫妻に関心を示さなかったため、ヴェルデュラン夫人はすっかり思惑が外れてしまう。こうしてヴェルデュラン夫人の怒りを買ったシャルリュス男爵は、夫人の画策によってモレルから激しく拒絶されることになる。
後半はだらだらと続いているアルベルチーヌとの関係が綴られている。アルベルチーヌが付き合っていた、あるいは今も付き合っている女友達のことが頭から離れない語り手は、ことあるごとに彼女に問いただす。すると彼女は先ず嘘をつき、嘘がばれると実は、といって告白するがその告白がまた別の嘘でないとは言い切れないので、語り手の悩みは尽きない。アルベルチーヌとはいつかは別れることになるだろうと予感するが、別れの時期は自分が選びたい、と語り手は思う。春の朝、語り手は自分の目覚めを取り囲む音や匂いに浸りながら、未知の女とのドライブを思い、ヴェネチア行きを思う。アルベルチーヌと別れるなら今だ、と思い立ち、ヴェネチアのガイドブックと時刻表を買いにやらせるためにフランソワーズを呼ぶ。ベルの音を聞いてやって来たフランソワーズが語り手に告げる。アルベルチーヌが手紙を残して立ち去ったと。

作中人物のそれぞれには複数のモデルがあるといわれているが、心覚えのためにモデルの一人と目されている人物を記しておく。
スワン:シャルル・アース、ベルマ:サラ・ベルナール、ベルゴット:アナトール・フランス、エルスチール:ジャック=エミール・ブランシュ、ヴァントゥイユ:サン・サーンス、ヴェルデュラン夫人:カイヤヴェ夫人、ゲルマント公爵夫人:グレフュール伯爵夫人、シャルリュス男爵:ロベール・ド・モンテスキュー
エルスチールの作品のモデル:ルノワールの「ムーラン・ド・ギャレット」、「シャルパンチェ夫人と子どもたち」、「水浴の女たち」、マネの「草上の昼食」など。(2011.9.6読了)
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by nishinayuu | 2011-11-24 09:47 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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