『国史の神話を超えて』(批判と連帯のための東アジア歴史フォーラム 企画)
2011年 11月 18日
「批判と連帯のための歴史フォーラム」は、日韓の歴史研究者たちのネットワーク。一国史的な民族主義歴史学を批判しつつ、国民国家の境界を越えた新しい連帯の可能性を模索するために、2000年1月に結成されたもので、年2回のワークショップと非定期の公開セミナーを実施している。この本は2003年8月21日に開催された「国史の解体に向けて」と題する公開討論会を通して生まれた論文集である。日韓両国の研究者たちが率直な自己批判と、思い切った提言を展開しており、刺激的で中身の濃い本である。以下に各論文のテーマと筆者を記しておく。
「‘国史’の内と外――ヘゲモニーと‘国史’の大連鎖」林志弦
「民族史から文明史への転換のために」李榮薫
「東アジアの近代化、植民地化をどう理解するか」宮嶋博史
「国民国家の建設と内国植民地――中国辺疆の‘解放’」茂木敏夫
「日本美術史と朝鮮美術史の成立」高木博志
「自主的近代と植民地的近代」都冕會
「植民地近代と大衆社会の登場」尹海東
「朝鮮王朝の象徴空間と博物館」李成市
「植民地の‘憂鬱’――ある農村青年の日記を通してみた植民地近代」板垣龍太
「李孝石と植民地近代――分裂の記憶のために」辛炯基
「植民地期の在日朝鮮人の文化とアイデンティティ再考」外村大
「歴史から剥ぎ取るべき‘神話’の数々」朴枝香
「優れた研究成果を市民社会に還元する方法は?」並木真人
「歴史、理論および民族国家――最近のアジア学の理論的動向」イ・ナムヒ
「非対称の中で――植民地近代化論について‘日本人’が考える」坪井秀人
「韓国における‘国史’形成の過程とその代案」李榮昊
(2011.8.31読了)