『神去なあなあ日常』(三浦しをん著、徳間書店)


c0077412_10251926.jpg2009年に発行されたこの物語の主人公は、『月魚』や『まほろ駅前多田便利軒』に引き続いてまたまた男の子(『まほろ』の主人公はおじさんだが、女性を女子というのが流行っているので、男性も男子、つまり男の子でいいかな、と思ってこう書きました)。舞台は三重県の山奥にある神去(かむさり)村。人里離れた、インターネットも使えず、携帯電話も圏外になってしまうようなこの辺鄙な村に、林業の研修生として送り込まれた主人公・平野勇気が綴った一年間の記録という形になっている。
そもそも自分の意志でこの村に来たわけではない勇気は、無人駅に迎えに来ていたチンピラのような風体の男・ヨキに携帯の電池パックを捨てられてしまい、あきれて家に帰ろうとする。ところが、終電はなんと午後7時25分で、もう出たあとだった。ヨキの車で最初の研修場所である森林組合の事務所に連れて行かれてからも何度も脱走を試みるが失敗。そのあとは神去村の最深部である神去地区に車で運ばれたため、逃げ出すのは諦める。勇気を研修生として受け入れたのは、近隣の民有林の干ばつなどを一手に引き受けている中村林業株式会社で、当主は自身も広大な山地を所有する中村清一。幼い息子の山太はとてもかわいく、妻の祐子はめったに見ないほどの美人だった。下宿先となったヨキの家にもタイプは違う美人妻・みきがいて、この村は美人率が高い、と勇気は思う。さらに直紀という未婚の美人も登場して、勇気に勇気を与える(!)ことになる。
山を守り、山に守られながら生きる人びとの暮らしぶりが、生き生きと伝わってくるばかりでなく、「木こり」と「木挽き」の違いなど、林業関係のあれこれが学べる、楽しくて勉強になる読み物となっている。圧巻は神去山の大祭のために切り倒した千年杉に乗って、山の男たちが山を走り下る場面で、迫力満点に活写されている。もしかしたら作者も勇気のように山で研修を受けてきたのではないだろうか。(2011.5.22読了)
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by nishinayuu | 2011-08-21 10:25 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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