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『明洞ブルース』(金南一著)。

c0077412_2381715.jpg『명동 블루스』(김남일著)
1980年代に韓国のあちこちで繰り広げられた民主化闘争は1987年6月、明洞聖堂籠城抗争へと発展した。ソウルの明洞にあるカトリックの聖堂に、学生を中心に会社員、商人らが立て籠もって機動隊と戦ったのだ。全斗煥大統領を戴いた軍部の独裁を打倒し、大統領直選と改憲を要求する闘争だった。
この闘争に女子学生として参加した語り手は、闘争の現場でキム・ギョンテを見かけて驚く。かつては学生運動の旗手で、後輩たちの憧れの的だったキム・ギョンテは、ある事件をきっかけに学生運動から離脱した人物だった。彼にかけられた、仲間を警察に売ったのではないか、という疑いは、あとになって誤解だったとわかるが、語り手は何も語らずに去っていったキム・ギョンテに失望し、記憶から消し去った。そのキム・ギョンテが勤め人の服装で闘争の現場に姿を現し、かつての学生運動の闘士そのままに機動隊に向かって石を投げ始めたのだ。それを見て勇気を得た学生たちや市民たちに混じって、彼は最後まで最前線で戦っていた。
6月の民主化大抗争がいちおうの成果を収めたあと、語り手は工場に女工として潜りこんで闘いを続ける。その工場にある日、キム・ギョンテが現れる。本社から派遣された労務管理担当の「お偉いさん」として。さらに時が経って語り手は酒場でキム・ギョンテを見かける。そのとき彼は、忠誠を尽くした会社から地方に左遷されることになった我が身を嘆き、会社を罵っていた。語り手は涙を流す。憐憫の涙ではなく怒りの涙だった。6月の喚声と熱気が目の前によみがえる。悪酔いして友人に介抱されているみじめったらしい男に背を向けて、語り手はその場を立ち去る。
著者は1957年生まれの小説家。作品には『国境』、『天才ウサギ』、道述家の伝記『田禹(右?)治伝』などがある。(2011.5.20読了)

☆文中に聖書のヨハネ伝1-5が出てきます。意味がよくつかめないので、日本語の聖書や英語の聖書、さらにはエスペラントの聖書も調べてみたら、以下のようになっていました。訳が「打ち勝たなかった」と「理解しなかった」の二通りあり、また、つなぎの言葉も「しかし」と「そして」の二通りあることが判明しただけで、全体の意味は依然としてはっきりしません。
※그 빛이 어둠 속에서 비치고 있다. 그러나 어둠이 빛을 이겨 본 적이 없다.(명동 블루스)
※빛이 어두움에 비취되 어두움이 깨닫지 못하더라.(대한 성서 공회 1992年版)
※光はやみの中に輝いている。やみはこれに打ち勝たなかった。(日本聖書協会-1955年版、日本聖書刊行会-1986年版)
※光は暗闇の中に輝いている。暗闇は光を理解しなかった。(日本聖書協会-1988年版)
※The light shines in the darkness,but the darkness has not understood it. (聖書刊行会-1986年版)
※Kaj la lumo brilas en la mallumo, kaj la mallumo ĝin ne venkis. (ザメンホフによる訳)
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by nishinayuu | 2011-08-18 23:08 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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