『続あしながおじさん』(ウエブスター著、松本恵子訳、新潮社)


c0077412_10224474.jpg『あしながおじさん』(原題はDaddy Long Legs)の続編で、こちらの原題はDear Enemy。『あしながおじさん』の読者たちからの強い要望にこたえて書いたものだという。
この作品の主人公は前作の主人公・ジュディの大学時代の親友であるサリー・マックブライド。ジュディが大富豪の夫から贈られた膨大な資金で自分の育った孤児院を改造することになって白羽の矢を立てたのが、裕福な家の令嬢で、暇がたっぷりあるサリーだった。暗くて非衛生的な孤児院と生気のない孤児たちを目にして愕然としたサリーは、明るくて楽しい孤児院を目指して戦闘を開始する。そして毎日の出来事をスポンサーであるジュディに書き送る。すなわちこの作品も前作と同じく書簡集の形を取っているが、前作が涙と笑いの書簡集であるとすれば、こちらは義憤と笑いの書簡集である。
タイトルのDear Enemyは孤児院のかかりつけのドクターに手紙を書くときにサリーが使っていることば。サリーによれば「いつも悲観的で、過敏症で、沈んでいる」このスコットランド人のドクターは、孤児院の院長としては未熟なサリーを教育するために、読むべき本を与えてはきちんと読んだかどうかテストしたりする、サリーにとっては煙たい存在である。孤児院の運営や孤児の扱いについてもサリーと意見が合わないと何日も口をきかないような、気むずかしくて頑固なドクターは、サリーにとってはまさにenemyのような存在だった。ユーモア感覚のあるサリーは、そんなドクターをからかってdear enemyと呼んだわけだが、ドクターといっしょに奮闘するうちにenemyがほんとうにdear な存在になっていく。はじめから結末が想像できるようなタイトルであるが、さまざまな障害や紆余曲折を経てやっと到達した境地として描かれているので、予想通りの結末ではあっても納得できる。(2011.3.21読了)
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by nishinayuu | 2011-06-22 10:22 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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