『No Greater Love』(Danielle Steel著、Dell)


c0077412_1017041.jpg物語は1912年4月10日に始まる。ウインフィールド一家の8人――父のバートラムと母のケイト、長女のエドウィナ、長男のフィリップ、次男のジョージ、次女のアレックス、三女のファニー、赤ん坊のテディ――は、エドウィナの婚約者・チャールズの両親を訪問した後、ケイトの姉・リズとルパート夫妻の豪壮な邸宅に滞在している。邸宅は極地のように寒く、主のルパートは子ども嫌い(著者はイギリス嫌い?)なので、一家のイギリス滞在の終わりは、主にとっても客にとっても喜ばしいことである。こうして一家はアメリカに向かう船に乗る。船の名はタイタニック。処女航海で氷の海に沈んだあの豪華客船である。
物語の3分の1はタイタニックに乗船していた家族8人とエドウィナの婚約者・チャールズの運命に当てられている。1912年4月15日の午前2時過ぎ、父と母、そしてチャールズは船とともに氷の海に消え、6人の子どもたちだけが残される。結婚をひかえた幸せいっぱいの娘だったエドウィナは、一瞬にして5人の弟妹の母親役という過酷な立場に立たされる。女と子ども優先の救命ボートに乗れずに、海に飛び込んだ後で救い上げられた16歳のフィリップ、12歳なのに父が11歳だと偽ったためボートに乗れたジョージ、海が怖くて船室に隠れていたのを見つけられて最後の最後にボートに投げ込まれた6歳のアレックス――みんな恐ろしい体験からなかなか立ち直れない。そんな弟妹をきちんと育て上げることにエドウィナは自分の青春の日々を捧げる。そうして12年後に、エドウィナにやっと明るい日差しが注ぎ始める。
タイタニックの遭難の場面は、ウインフィールド一家という特定の人物集団の行動を追っているので臨場感満点の展開になっている。また、両親と婚約者の喪失そのものと同じくらいエドウィナを苦しめたのが、母が自分たちとともにボートに乗ることを拒んで、夫とともに死ぬことを選んだことだったのだが、それがどうしてそれほどにエドウィナを苦しめたのかが後のほうできちんと説明されている。『Bugalow2』はむだな繰り返しの分が多くてあきれたが、その点この作品には冗長なところがなく、しかも必要なことは充分に書き込まれていて、読み応えのある作品となっている。(2011.2.28読了)
☆タイタニックの遭難場面には、調査記録や研究書に基づいて書かれており、救命ボートが人数分用意されていなかった、2等航海士のライトラーは頑として救命ボートに男性を乗せなかった、すぐ近くの海にいた船は無線を切っていたためタイタニックのSOSは届かなかった、などなど多くの事実がうまく物語に組み込まれています。ただ、タイタニックのバンドが最後にhymnのAutumn(こんな賛美歌あった?)を演奏した、というところがちょっと引っかかったので調べてみました。最近の研究によると、バンドが最後に演奏したのは当時流行していたSonge d’automne(秋の夢)という悲しいワルツだったということです。賛美歌が演奏されたという説もあるので、ごっちゃになったのかもしれませんね。
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by nishinayuu | 2011-05-26 10:17 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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