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『真実は銘々に』(ウイジ・ピランデルロ著、能美武功訳、青空文庫)

c0077412_1122518.jpgイタリアの劇作家で詩人のピランデルロ(1867~1936)が1917に発表した戯曲。
ある町がボンザという男とその家族についての噂でもちきりになっている。噂とは、県庁の役人であるボンザが町外れの高い建物に妻を、妻の母親であるフローラ夫人を町中のアパートに住まわせて、二人を会わせないようにしている、というもの。県庁の総務部長・アガジの妻であるアマリアと友人たちが興味津々で待ちかまえるところにフローラ夫人とボンザ氏が交互に現れて語る。
夫人の言い分は――婿が妻(フローラ夫人の娘)の愛情を独り占めしたがっているので、自分はそれを尊重して堪えている。婿は病気なのだ。
一方、婿であるボンザの言い分は――妻は4年前に死んでいて、高い建物にいるのは二度目の妻なのだが、娘の死を受け入れられないフローラ夫人は、病気の婿のために娘に会うのをがまんしているつもりになっている。気が変な夫人のために妻も協力して娘を演じてくれている。
再びフローラ夫人が現れて語る――婿が異常なほど強く娘を愛していたため、娘が身体をこわして1年近く療養した。その間に婿は娘が死んだものと思いこみ、娘が戻ってきても見分けられなかったため、友人たちが狂言を仕組んで「再婚」させたことにした。今ではもとの妻だとわかっているが、また妻を失うのが怖くて再婚のふりをしている。自分は娘が生きていると信じている気の変な女を演じている。
というわけで、二人の話を聞けば聞くほど人びとは混乱する。そして真実はどちらなのか突き止めずにはいられない人びとは、二人の話を裏付ける証拠探しや、二人の直接対決などを画策し、ついには高い建物にいる「妻」を呼びだすに至る。しかしその妻のことばは人びとの意表を突くものだった。
中心になる人物はアマリアの弟であるロージシ。彼は「他人の話を尊重すべきだ、たとえそれが自分の考えとはまるで逆の時でも」という考えの持ち主で、最初から最後まで人びとの真実探しに同調しなかった。どちらも信じよ、さもなければどちらも信じるな、という信念を貫いた彼の「皆さん、真実が見つかりました、ご同慶の至りです」というからかいのことばと、それに続く哄笑で劇は幕となる。(2011.2.3読了)

☆画像は『ピランデルロ戯曲集』のものですが、この作品が収録されているかは不明。
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by nishinayuu | 2011-05-14 11:06 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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