『ペネロピアド』(マーガレット・アトウッド著、鴻巣友希子訳、角川書店)


c0077412_1031710.jpgオデュッセウス(ユリシーズ)の妻であるペネロペイアの物語。トロイ戦役のあと長い彷徨を経て故郷に帰還したオデュッセウスについてはホーマーの『オデュッセイア』などで詳しく語られている。では、そのオデュッセウスを20年もの間待ち続けた妻のペネロペイアとは、いったいどんな女性だったのだろうか――という疑問に対する一つの答えを提示した作品である。圧倒的な力を持つオデュッセウスの言い分だけでなく、陰に押しやられてしまったペネロペイアの言い分に耳を傾けてみよう、というわけだ。語り手はペネロペイアと12人の女中たち。この12人の若い娘たちは、ペネロペイアの意を汲んで彼女のために働いたつもりだったのに、そうとは受け取らなかったオデュッセウスと息子のテレマコスによって惨殺されてしまったのである。
愉快なのは、女神アテネに愛される「奸智に長けた」英雄オデュッセウスは短足の醜男として、またトロイ戦争の原因を作ったヘレンは美しさを鼻にかけた実に嫌みな女として描かれていること。ヘレンの場合は、絶世の美女が性格もよかったりしたら許せない、というペネロペイアの(著者の?)思いが結晶したのかもしれない。
周辺に追いやられた人たち、声を消された人たちの物語としては、アメリカの南北戦争をいわば敗者の側から描いた『風と共に去りぬ』がすぐに思い浮かぶが、「語り手や視点を変えて、女性側の言い分を展開した作品」の例を訳者の鴻巣友希子がいくつか挙げている。それらのなかでは
『ウェイクフィールド』を妻の側から語った『ウェイクフィールドの妻』(E・ベルティ)
『ユリシーズ』を妻のモリーの視点から描いた架空の小説(クッツェーの作品に出てくるという)
に惹かれるが、そもそも原作をまず読まないと……。(2011.1.8読了)
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by nishinayuu | 2011-04-11 10:03 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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