『月を売った男』(ロバート・ハインライン著、井上一夫訳、創元社)


c0077412_11375.jpg著者の処女作「生命線」、第2作「光あれ」、の他「道路を止めてはならない」「月を売った男」「鎮魂歌」の5編を収めた短編集。いずれも20世紀後半の時代が舞台になっている「未来小説」で、現実の世界がこれらの小説世界よりずっと遅れているのがちょっと残念でもあるが、何となくほっとさせられもする。
「道路を止めてはならない」――鉄道や車に代わる移動手段として、高速で動く道路が敷き詰められている世界が描かれている。これはたいていの人が子どもの頃に一度は想像した世界ではないだろうか。高速道路に「乗る」方法や、他の道路に移る方法などが「科学的に」説明されている点が、子どもの想像とは違うところ。
「月を売った男」――有人ロケットの月世界到着を目前にして、企業家たちは月の土地、ウラニウム、ダイヤモンドなどに一攫千金の夢をかけ始める。そんな企業家の一人であるディロス・ハリマンの最大の夢は、自分の足で月に立つことだった。ハリマンは月の土地を売ったり、切手の先物取引をしたりして月ロケットを飛ばすための資金集めに奔走する。しかし結局彼はロケットには乗れなかった。当時のロケットの性能ではパイロット一人が乗るのがやっとだったのだ。夢のためなら何でもするハリマンと、その名の通り堅物のストロングのコンビの危ういバランスが愉快。
「鎮魂歌」――「月を売った男」の続編で、地球と月の往復ロケットが飛ぶ時代が到来している。すでに年老いて、健康も損ねているハリマンが、少年の頃から抱き続けていた夢をついにかなえて月に降り立った。そして月の大地には彼を鎮魂する詩が残る。(2010.12.9読了)
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by nishinayuu | 2011-03-27 11:03 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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