『アンドレアス・タアマイエルが遺書』(アルツール・シュニッツレル著、森鴎外訳、岩波書店)


c0077412_1713311.jpgオーストリア帝国の銀行員であるアンドレアス・タァマイエルには結婚して4年目の妻がいる。この妻がなんと、生まれるはずのない肌の色が黒い赤ん坊を生む。それ以来妻は不義密通をした淫らな女として、アンドレアス・タァマイエルは妻に不義密通されたふがいない男として、世間の嘲笑にさらされる。そんな世間に抗議し、自分が妻を信じているし愛していることを証明するために自殺することにしたアンドレアス・タァマイエルが記した遺書、という形式で展開する小説である。
彼によれば、黒い皮膚の赤ん坊が生まれたのは、妻が妊娠中に黒人グループに取り囲まれるという恐ろしい目にあったせいだという。そして、妊娠中の強烈な体験が胎児に影響を与えることは世間では珍しいことではないとして、古今東西のいろいろな例を挙げている。「世にも不思議な物語」を人びとに信じさせ、自分も信じようと必死になっているのだ。そのあげく、おそらくは虚しい努力だと悟って、彼は自殺の道を選ぶ。「世にも不思議で世にも哀れな物語」である。

☆この作品も「青空文庫」で読みました。著者名を森鴎外はシュニッツレルと表記していますが、現在はシュニッツラーという表記が一般的ですよね。フロイトとも親交があった作家で、ウィーン中央墓地にお墓があるそうです。数年前にそこに行ったときはこの作家の作品を読んでいなかったので、お墓もノー・チェックでした。おわびに(?)お墓の画像をupしておきます。(2010.11.24読了)
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by nishinayuu | 2011-03-21 17:13 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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