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『アッタレーア・プリンケプス』(V・M・ガルシン著、神西清訳、岩波書店)

c0077412_1017308.jpg暗い時代のロシアのとある植物園に、南国の植物を集めた温室があった。そこで育てられているアッタレーア・プリンケプスというブラジル産のシュロの木が、自由の世界に憧れて温室のガラス天井を突き抜けることを思いつく。懸命の努力の結果やっと天井を突き破ることに成功したアッタレーア・プリンケプスを待っていたのは、冷たい風が吹きすさぶ氷の世界だった。
『赤い花』で知られるガルシンによる寓話的な短編小説。誇り高く、希望にあふれた主人公が悲惨な最期を迎える、という点はオスカーワイルドの『花火』と似ていると言えなくもない。主人公が周りの者たちから浮いてしまっている点も共通するが、この作品の主人公には花火の主人公のような傲慢さは全くない。広い世界を見渡す立場になく、的確な時期を待つことも知らず、大衆の理解も得られないままに一人で突っ走ってしまっただけなのだ。よくまとまったお話であり、とにかく短いので軽く読めるが、内容のほうはちょっと重い。
ところで、アッタレーア・プリンケプスとはどんな植物なのか。作中にブラジル原産の植物とあり、訳者は棕櫚としている。インターネットで調べてもほとんど情報がなくてわからないが、どうやらボリビア産の椰子科の植物らしく、同じく椰子科の棕櫚(Trachycarpus Fortunei)とは別物のようである。アルファベットで表記するとAttalea Princepsで、この学名がそのまま和名としても使われている。つまり和名はないということで、英名も見つからなかった。(2010.11.22読了)
☆この本は「青空文庫」で読みました。忙しくて本を手に入れる時間がない時に駆け込む電子書店です。選び抜かれた本ばかりとはいかない書店ですが、この本は「あたり」でした。

☆「東日本大地震」の翌日です。観測史上最大の地震とそれに伴う大津波で東北各地の町や市が壊滅状態、という報道に慄然とするばかり。東京もずっと余震が続いています。
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by nishinayuu | 2011-03-12 10:57 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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