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『ママのクリスマス』(ジェームズ・ヤッフェ著、神納照子訳、東京創元社)


c0077412_17562391.jpg「ロッキー山脈の裾にある中型の楽園」であるメサグランデ市に住み、公選弁護人事務所の主任捜査官として働くデイヴが、担当中の事件についてママに話してきかせると、ママは居間に坐ったままですいすいと事件を解決していく、という「ママ・シリーズ」のひとつ。今回の事件は「キリストの栄光眩き使徒教会」の牧師が殺害され、隣の家の息子ロジャー・マイアーが犯人として追われる身になるというもの。殺人現場に残されたダイイング・メッセージとか、予想外の犯人とか、普通に推理小説として楽しめる要素も充分に盛り込まれている作品であるが、一方でユダヤ色が強く印象に残る作品でもある。そもそもママもデイヴも信仰の程度はともかくれっきとしたユダヤ教徒であり、ロジャーもその両親のマイアー夫妻もユダヤ教徒である。
キリスト教の派がなんと53も存在するというメサグランデで、キリスト教徒たちの有形無形の圧力に立ち向かいながらユダヤ教徒として暮らしていくとはどういうことなのかを、しみじみと考えさせられる作品である。2000年の長きにわたって迫害され続けてきたユダヤ人は、生き残るための武器として子どもたちに教育を身につけさせたという。そのため、教育の中心的な担い手である母親と子供の間に強い絆が生まれたということだが、そうしたユダヤの母親の一人である頼もしいママと、中年になってもママに頼りっきりの(?)デイヴというコンビのふんわりした雰囲気がなかなかよい。(2010.11.21読了)
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by nishinayuu | 2011-03-09 17:56 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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