「ほっ」と。キャンペーン

『The Memory Keeper’s Daughter』(Kim Edwards著、Penguin)


c0077412_10395540.jpg1964年の冬の夜、デイヴィッドとノラ夫妻に初めての子供が生まれる。ブリザードのせいで担当の産科医が来られなかったため、整形外科医であるデイヴィッドが赤ん坊を取り上げることになる。元気な男の子が生まれたあと、思いがけずもう一人、女の子が生まれる。その女の子を見たデイヴィッドは、とっさにその子を妻の目から隠す。その子は明らかにダウン症だった。心臓病で苦しんで死んだ妹と、妹の死から立ち直れなかった母親を見て育ったデイヴィッドは、妻に同じ苦しみを味あわせたくなかったのだ。デイヴィッドはその場に立ち会っていた看護婦のキャロラインに子供を渡し、ある施設に預けるように依頼する。そしてノラには双子の片割れは死産だった、と告げる。キャロラインは施設まで行くことは行ったが、そこの有様に衝撃を受けて、子供を抱いたまま家に戻り、荷物をまとめて子供とともに姿を消す。
この日からデイヴィッドには我が子を捨て去り、その秘密を一人で抱える苦しみの日々が、ノラには一度も抱かないままに女の子を失った悲しみの日々が、そしてキャロラインにはデイヴィッド夫妻や世間から隠れて女の子を育てるという緊張の日々が始まる。
なんとも重いテーマの作品である。デイヴィッドの一瞬の判断が三人のその後の人生を決定したわけだが、三人の中では当のデイヴィッドがやはり最も過酷な生を生きることになったと言える。言い換えれば、二人の女性たちは、過酷な生を生きながらもやがてそれを乗り越えて前に進んでいく。そして彼女たちが一人ずつ育てた双子の将来にも明るい光が見えてくるのである。重いけれども救いがあって、爽やかな感動を覚えながら本を閉じることができる。(2010.11.15読了)
[PR]
by nishinayuu | 2011-03-06 10:40 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://nishina.exblog.jp/tb/16015313
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
<< 『ママのクリスマス』(ジェーム... 「スリとケチャップ」 特派員報... >>