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『愛と名誉のために』(ロバート・パーカー著、菊池浩一訳、早川書房)


c0077412_1155290.jpg1950年の初秋、コルビイ大学の新入生ダンス・パーティで18歳のブーンはジェニファと踊った。それはブーンが生まれた日――ジェニファとともに生きようという情熱と決意が芽生えた日だった。作家志望のブーンは授業に興味が持てずに大学を中退し、そのまま徴兵されて朝鮮戦争にかり出される。兵役を終えて帰国してみると、ジェニファには結婚相手がいた。人生の目標を失ったブーンは職を転々とし、ニューヨークからカリフォルニアへと流れていく。その間ずっとジェインへの思いは変わることなく、はじめのうちは手紙を書いては投函していたが、そのうちにただノートに自分の思いを綴るだけになる。酒に溺れ、身も心もぼろぼろになっても、そのノートだけはいつも身につけていた。
1961年初秋のある日、ブーンはふと我に返って自分の姿を見つめる。海で全身を洗い清めて街に出る。コーヒー・ショップに手書きの求人広告が出ていて、一人の男が店の前の路上を掃除していた。店のオーナーのトムだった。トムに拾われたこのときから、ブーンの「愛と名誉のための」闘いの日々が始まる。

ブーンのとことんまで堕ちていく様のすさまじさと、そこから立ち直って再生していく様の輝かしさは、ちょっと現実離れしているが、そこがこの作品の読みどころでもある。全体にきびきびしていて、男性的な作品という印象である。ただしそういう印象を受けたのは、もしかしたら会話文の訳がやたらに堅苦しいせいかもしれない。
たとえば次のような文に出くわすと、「ん?」となって先に進めなくなる。いずれもジェニファがブーンに語りかけていることばである。
(例1)「あなたはそんなことはない。あなたがそうでないから、わたしは、そうでない生活が可能であることを知っている」
(例2)「あなたは、わたしと一緒にいることで、そしてあなたの人となりで、わたしにいろいろなことを教えてくれた。さらに……」
(例3)「わたしは、得たばかりの知的卓越性の証拠に心を奪われて、ごくありふれた言葉が思い浮かばない。」
(2010.10.17読了)
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by nishinayuu | 2011-02-13 11:06 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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