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『やんごとなき読者』(アラン・ベネット著、市川恵里訳、白水社)


c0077412_1152278.jpgイギリスの劇作家、脚本家、俳優、小説家であるアラン・ベネットの作品で、原題はThe Uncommon Reader。

エリザベス女王がある日、宮殿の裏庭で移動図書館に出くわす。本を借りにきていた厨房の職員ノーマンに声をかけたのがきっかけで、女王も本を借りることになる。本を借りずに帰ったら司書が、この移動図書館には何か欠陥がある、と思うかもしれないからだ。こうして女王と移動図書館のつきあいが始まり、女王はノーマンを道案内にして読書の道に分け入る。読書の魅力に目覚めた女王は、ノーマンを書記として身近におき、本の選択や調べ物を担当させるようになる。こうしてごく普通の読書人だった女王が熱心な読書家に変身し、やがて自分も本を書こうと思い立つに至る。

生真面目で一途で浮世離れしていて、それを自覚しているだけではなく、世間からもそう見られていることも承知していて、それをうまく利用することも知っている女王。そんな女王を面白そうに眺めているだけで、意見を言ったりはしないエディンバラ公。読書にのめり込んで公務に身が入らない女王にも、女王を読書に引きずり込んだ元凶のノーマンにも苦々しい思いを抱いている秘書のサー・ケヴィン。ただの本好きの厨房職員から大学で創作を学んだ前途有望な青年へと成長するノーマンなど、多彩な登場人物がそれぞれ魅力的に描かれている。また、全編に政治家や作家の人柄や作品についての言及があふれており、それらに対する女王の評(作者の評ですよね)がユニークで楽しい。軽妙な読書案内としても読めるし、風刺と敬愛の情のない交ぜになった「エリザベス女王伝」としても読める。(2010.10.11読了)
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by nishinayuu | 2011-02-11 11:05 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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