『92Pacific Boulevard』(Debbie Macomber著、 MIRA)

c0077412_1705891.jpgワシントン州のシーダー・コウヴという町を舞台として、そこに住むさまざまな人びとの日常を描いた小説。タイトルになっているのは町のシェリフであるトロイの住居の番地である。トロイは物語の全体にわたって活躍する人物であり、主要人物であることは確かだが、主人公と言っていいかどうか。というのはこの作品には主役級の人物が大勢登場して、章ごとにそれらの中の一人、あるいは一組が主人公になったり、副主人公になったり、端役を務めたりしているからだ。たとえば判事のオリヴィアとその一族、図書館員のグレイスとその一族、ヘア・スタイリストのテリーとその一族、消防士のマックとその一族、などなどとにかく大勢の人が入れ替わり立ち替わり現れて動き回るので、なんともめまぐるしい。しかも彼らの多くが配偶者と死別したり離婚したりしていて、再婚している例も多い、という具合なので、子どもや孫を含めて人名が数え切れないほど出てきて、ややこしいことこの上ない。
ストーリーのほうはごく単純で、始めのほうで二つの事件が起こり、そのことでひとしきり町が騒然とするのだが、事件の解決は遅々として進まない。事件のことはさておいてとでもいうように、人びとはときには悩みや苦しみを、ときには喜びを分かち合いながら、そして老いも若きも恋をしながら日々を送っていく。事件のひとつが解明されるのは、全部で36章のこの作品の27章目で、もう一つは33章目であり、しかもずっと引っ張ってきた割にはあっけなく解決してしまう。というわけでミステリーを期待すると裏切られるが、ミステリー風の味付けをした風俗小説と思えば、それなりに楽しめる。(2010.9.10読了)
☆読み始めてすぐ、これは人物関係が複雑そうだと予想できたので、人物の相関関係を一枚の紙に書きながら読み進めました。登場人物の数が多いうえに、彼らの多くがありきたりの名前をもっているので、一覧表を作って正解でした。
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by nishinayuu | 2011-01-05 17:01 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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