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『失われた時を求めて 5』(マルセル・プルースト著、鈴木道彦訳、集英社)

c0077412_956126.jpgこの巻には第3編「ゲルマンとの方」のⅠが収められている。
語り手の一家はパリのアパルトマンに引っ越してくる。そこはゲルマント公爵夫人の館の一翼にあって彼女のアパルトマンに隣接している。語り手は、ゲルマントという地名から喚起されるものと実際のゲルマント夫人とをうまく同化できないでいるが、夫人に近づきたくて、毎朝散歩中の夫人を待ち伏せる。「心底から公爵夫人を愛してしまった」のだが、このあたりの語り手の行動は完全にストーカーである。
夫人に近づくために、語り手はドンシュールの駐屯地までサン=ルーに会いに行く。彼の叔母である夫人に語り手を招待するよう働きかけてもらおうとしたのだ。しかし、サン=ルーは愛人との関係に悩んでいて語り手の望みは叶えられそうもない。サン=ルーが100万フラン以上も投じている愛人というのが、以前売春宿で20フランを稼ぐのに躍起になっていた別名「ラシェルよ、主の」だということに気づいた語り手は、恋の苦悩を支える幻想の偉大さに感動する。
やがて語り手はヴィルパリジ侯爵夫人のサロンを訪れる。ゲルマント一族の一員でありながら、型破りの言動のため社交界では高い地位を得られなかった人物である。このサロンで語り手は大勢の人びとに出会い、彼らの話を聞き、彼らを観察する。ゲルマント公爵夫人、ゲルマント公爵、外交官のノルポワ氏、語り手の友人であるブロックとサン=ルー、サン=ルーの母親であるマルサント夫人、スワン夫人オデット、古文書学者や歴史学者そしてシャルリュス男爵。絵を描きながら応対するヴィルパリジ夫人を中心に様々な話題、人物評が飛び交うなかで、人びとがときには熱を込めて、ときには嫌悪を露わに、ときにはちゃかすように繰り返し取り上げるのはドレーフェス事件とユダヤ人である。
ヴィルパリジ夫人の家から帰る時、シャルリュス男爵が語り手に異常接近する。また、最後は祖母の病気の話で締めくくられており、この二つの出来事が今後どう展開していくのか、第6巻への期待はいやが上に高まる。(2010.9.7読了)
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by nishinayuu | 2010-12-30 09:56 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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