『愛するものたちへ、別れのとき』(エドウイージ・ダンティカ著、佐川愛子訳、作品社)

c0077412_9461716.jpgハイチで生まれ、12歳のときにニューヨークに移住した著者による、二人の父と家族の物語。2007年度全米批評家協会賞の自伝部門の受賞作だという。
ダンティカは1969年にアンドレ・ミラシン(通称ミラ)の長女として生まれた。ダンティカが2歳のとき、父はニューヨークに旅立った。貧しさから脱するためだった。2年後には母も父の許へ旅立った。残されたダンティカと弟のボブは、父の兄であるジョゼフ伯父さんとその妻デニーズ伯母さんにかわいがられて育った。ジョゼフ伯父さんとデニーズ伯母さんの家には自分たちの息子の他に、友人が托していった娘マリー・ミシェリンと姪のリリーンがいた。そこにダンティカ姉弟も加わって、賑やかに暮らした。12歳のとき、ダンティカとボブは伯父夫婦に別れを告げてニューヨークの両親の許に移った。それは「片方のパパは幸せで、もう片方のパパは悲しい」できごとだった。
伯父さんを中心とするハイチの家族、父ミラを中心とするアメリカの家族、そのどちらも温かくて結束の固いすばらしい家族である。しかし、彼らを取り巻く社会の状況は厳しい。ハイチは不安定な政治状況から恒常的な戦闘状態にあり、そのせいでマリー・ミシェリンは幼い子どもたちを残して死んでしまい、ジョゼフ伯父さんは暴徒に追われて命からがら逃げ出すことになる。また、ハイチの人々に対するアメリカ社会の対応も冷酷である。そのせいでジョゼフ伯父さんは、ダンティカ一家の許に辿り着く前に無惨な死を迎えてしまったのだった。ジョゼフが埋葬された夜、自分も死の病に冒されていたミラは言う。
「もしも私たちが機会を与えられて他の国と同じようになることを許されたなら、そうしたら、私たちのうちだれ一人としてここで生き、ここで死にたいとは思わないだろう」
☆遠いハイチという国に思いを馳せる機会を与えてくれる一冊である。(2010.7.16読了)
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by nishinayuu | 2010-11-10 09:46 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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