『ピアノ・サンド』(平田俊子著、講談社)

c0077412_9582747.jpg『ピアノ・サンド』(「群像」2001年4月号)と『ブラック・ジャム』(「群像」2001年10月号)の2編のほかに、「かなり長めのあとがき」というサブタイトルのある『方南町の空』が収録されている。
『ピアノ・サンド』――離婚したあと一人暮らしをしている「わたし」のところへ、昔の職場の後輩から「ピアノを預からないか」という話が舞い込む。100年前のフランス製のアップライト、と聞いて乗り気になり、置き場を確保するために、離婚後もそのまま使っている大きなベッドとテーブルをリサイクル店に売ることにする。恋人の槙野にピアノの話をしてみると、槙野はやけにピアノに詳しい。「あなたのうちにはピアノがある?」と訊くと「あるよ。娘が習っているから」とあっさり答える。ピアノが来たら毎日練習しよう、これから先はピアノと生きよう、ピアノは終電でどこかに帰って行くことはない、と思う「わたし」。ピアノが運ばれてくるときのことを空想していて、異次元空間にあるかつて夫と暮らしていた部屋に迷い込んだりもする。しかしピアノの持ち主の気が変わって、ピアノを預かる話は立ち消えになる。「わたし」はある日、電車を乗り継いで、海辺にあるレストランに問題のピアノを見に行く……という具合に、かなり気ままで、ちょっと侘びしいひとり暮らしの女性の日常が、さらりとしたタッチで綴られている。(2010.6.30読了)
☆ファミレスはドレミファに似ている、(作曲家の)スッペは名前からして威厳がない、ピアノの前でサンドイッチを食べたら、嫌でもジョルジュ・サンドを思い出すだろう、ピアノ・リサイタルとピアノ・リサイクルはよく似ているなあ、などなど、愉快なことば遊びもあります。この人の詩も読んでみたくなりました。
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by nishinayuu | 2010-10-26 09:58 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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