『対岸の彼女』(角田光代著、文藝春秋社)

c0077412_1038873.jpg読書会「かんあおい」2010年7月の課題図書。
1967年生まれの著者と同世代と思われる女性たちを主人公とする、世代的特徴の顕著な小説である。すなわち、学校時代は「仲間はずれ」を怖れて周りに合わせることに戦々兢々として過ごし、社会人になると今度は勝ち組、負け組という粗雑な流行語に翻弄される――大まかに言えばそんな世代である。主人公の一人である小夜子は、人付き合いが苦手な自分と、その点で自分にそっくりな娘をなんとかするために、外の世界に踏み出していく。プラチナ・プラネットという会社に採用され、清掃部門要員として働き始めた小夜子は、清掃業のプロである中里典子に鍛えられ、働くことの厳しさと喜びを知っていく。保育園に入った娘も徐々に社会性を身につけていく。
もう一人の主人公である葵は、同じ大学の出身と聞いて小夜子を採用するほどに、おおらかで溌剌としている――と見えて実は誰かと繋がっていたいという切実な願望に突き動かされている寂しい女性である。経営の才も人を見る目もあるとは言いがたく、経営は次第に行き詰まり、社員たちには逃げられてしまう。一人残された葵に手をさしのべたのは、同世代の苦悩を共有し、葵に友情を感じ始めた小夜子だった。
物語は小夜子と葵を中心とする現在と、葵とナナ子との交友を中心とする葵の過去が交互に語られる形で進んでいく。「専業主婦」で人付き合いが苦手な小夜子と、「ばりばり働くタイプ」の闊達で明るい葵――そんな対岸に立っているかのようだった彼女たちが、暗い過去も克服して互いに相手に駆け寄っていく姿を象徴する文で物語は締めくくられている。(2010.6.17読了)
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by nishinayuu | 2010-10-07 10:38 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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