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『どちらでもいい』(アゴタ・クリストフ著、堀茂樹訳、早川書房)

c0077412_1013625.jpg5冊目のアゴタ・クリストフ。訳者のあとがきによるとこの短編集は、1970年代~1990年代前半ごろまでのノートや書き付けの中に埋もれていた習作の類を一冊にまとめたものだという。
なにこれ、と思いながら読んでいたので、最後にあとがきを読んで納得したが、それでも短編としてまとまっていて「ちょっと好きかもしれない」と思える作品がないわけではない。それで、収録作品を「読んでいて心地よい」「読んでいて心地悪い」「なにこれ?」の三つに分けて以下に記しておく。
【心地よい】――『北部行きの列車』『我が家』『ある労働者の死』『家』『郵便受け』『間違い電話』『田園』『街路』『ある町のこと』『私の父』
【心地悪い】――『斧』『子ども』『我が妹リーヌ、我が兄ラノエ』『母親』『ホームディナー』『製品の売れ行き』『私は思う』
【なにこれ】――『運河』『もう食べたいと思わない』『先生方』『作家』『どちらでもいい』『運命の輪』『夜盗』『復讐』

『私の父』のみは「わたしがまだ父の娘であった頃」という文から語り手を女性と特定できるが、意識せずに読んでいるとどの作品も主人公や語り手が男性もしくは性別なしであるように読める。それほどに作者が女性であることを意識させない乾いた文体で綴られていて、この点は上に挙げた長編4冊と共通する。

ところで著者は1935年生まれであり、病気も抱えていることから、この先長編の新作が発表される可能性は極めて少ないらしい。残念なことである。(2010.6.9記)
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by nishinayuu | 2010-09-22 10:13 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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