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『背徳のクラシックガイド』(鈴木敦史著、洋泉社)

c0077412_1014492.jpg「美術や文学などでは、奇想の○○、異端の××といった、アウトサイダーものが根強い人気を集めている。クラシック音楽の中にもそういった側面があるはずなのに……(中略)異端なるものの放つ妖しい光に吸い寄せられ、クラシックの長い道を歩むのも、また楽しからずや」という著者によるガイドブック。
第一部の演奏編に39枚、第二部の作品編に48枚、という膨大な数のディスクがとりあげられている。したがって一枚のディスクについての評は1ページないし2ページという短さである。その限られた長さの中で著者は、名・迷曲も名・迷指揮者も名・迷奏者も、片っ端から情け容赦なくやっつけていく。笑いや受けを狙ったような語り口が気にならなくもないが、いつの間にかその語りが快くなるほど、話の中身は充実している。「格闘する二人の怪物が開く異界の扉」(ホロビッツとジョージ・セルによるチャイコフスキーのピアノ協奏曲1番)、「北欧を蹂躙するロシアン・パワー」(ロジェストヴェンスキーが指揮するシベリウスの交響曲5番)、「ブラームスすぎるショパン」(クレンペラーが指揮するショパンのピアノ協奏曲1番)など、各項目のタイトルもふるっていて、タイトルだけでも楽しめる。
ただ、すべて特定のディスクについての評なので、読者が当該のディスクを持っていないと話にならない、という感じもする。いくら文章表現が面白くても、話題になっている音楽が聞こえてこなければ、面白さも半減、場合によっては皆無となる。特に第2部で取り上げられている曲は一般的ではないものが多く、よほどの通でないとついて行けないのではないだろうか。というわけで、この本にふさわしい読者は、ここで取り上げられているディスクをすでにたくさん持っている人、あるいは小遣い銭が潤沢でこれらのディスクをすぐに買い集められる人、という2種類の人になりそうだ。(2010.5.19記)
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by nishinayuu | 2010-09-01 10:14 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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