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『告白』(湊かなえ著、双葉文庫)

c0077412_10202220.jpg2009年に本屋大賞を受賞し、2010年6月には映画も公開されるという話題作。
幼い娘を殺した犯人はこの教室にいる、と担任の教師が生徒たちに告げる第1章に始まり、次々に別の話者が事件のこと、自分のことを語っていき、最後の第6章で再び件の教師が登場して復讐が成就したことを明らかにする――という構成のうまさと衝撃的な内容でぐいぐい読ませる。興味深いのは、登場人物のだれもが、自分を語り出したとたんに外から見えていたのとは異なる姿で立ち現れることで、外面と内面のどちらが本当の姿なのか(あるいはどちらも本当でどちらも偽りという可能性もある)、はっきりつかめないままに話が進んでいく。こんなところからもこの作者がなかなかのウデの持ち主であることが窺われる。
しかし、である。こんなに後味の悪い作品も珍しい。それに、復讐される側の人間にも復讐する側の人間にさえも共感できる人物が一人もいない。忠臣蔵にしてもエドモン・ダンテスにしても、復讐する側に道理があればこそ復讐のあとにはカタルシスがあり、復讐される側も、まあしかたがない、と納得して死んでいくのだ(多分)。この作品の復讐劇はただただ理不尽な、言ってみれば異常心理の引き起こした異常な事件でしかない。巧みでインパクトのある作品であることは確かだけれども、「このミステリーがすごい」ともてはやされ、映画化までされてそれをまた大勢の人が見に行く(だろう)ことには違和感を覚える。(2010.5.1記)
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by nishinayuu | 2010-07-24 10:20 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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