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『月下の恋人』(浅田次郎著、光文社)

c0077412_22192096.jpg読書会「かんあおい」2010年5月の課題図書。10編の短編が収録されている。
『情夜』――妻子に捨てられ、大屋の情けで借家に居続けている村山克平のもとに、見も知らぬ女が大金と共に転がり込む。
『告白』――高校生の梓の銀行通帳に、母と自分を捨てた父から毎月小遣い銭が振り込まれている。でもいつからか梓は気がついている。そのお金を出しているのが、母と再婚した「あいつ」だということを。
『適当なアルバイト』――多摩川べりの遊園地でアルバイトをすることになった僕と保は「お化け屋敷」に配属されたとたん、前任者の老人が池で死んでいたことを知る。『風蕭蕭』――上の作品と同じ「僕」が語り手。僕の隣室に住む昔の書生のような居住まいの志賀さんと、逆隣りに住むふぬけたヤクザものの佐藤カツミとの交友記。
『忘れじの宿』――中国語の翻訳で暮らす杉田。死んだ妻の思いが固まったコリを、「忘れ宿」のマッサージ師にほぐしてもらう。
『黒い森』――竹中(40歳)は10年のドイツ滞在を終えて本社に戻ったとたん、古株の社員・笛木小夜子と恋に落ちる。小夜子のことはなにも知らないまま求婚すると、あちこちで波風が立ち……。
『回転扉』――細い口ひげを生やし、銀細工の犬の頭がついたステッキを手にした紳士とすれ違うたびに、語り手Sの運命が回転する。みなしご→女優→結婚間近の平凡な女→女優という具合に。
『同じ棲』――配電盤のブレーカーが落ちた一瞬の間に、慎也と由紀の家が見ず知らずの老夫婦に占拠されて……。
『あなたに会いたい』――東北新幹線のとある駅に40年ぶりに降り立った内藤(58歳)。車のナビゲーション画面に現れた「あなたに会いたい」というマークにタッチして、指示通りに車を走らせていると、荒れ果てた古いホテルの前に出る。
『月下の恋人』――僕と雅子は三年間の恋を終わりにするために、白いクーペで海辺の宿へ。成り行きで一緒に死のう、ということになり、渚に出て別れのくちづけを交わす。と、足元には脱ぎ捨てられた浴衣があり、沖には小さな頭が二つ浮かんでいる。先刻ふたりが部屋から見たカップルのものらしい。我にかえった二人は、宿の老婆に促されて急いで宿を去る。そのとき、投宿するときに見かけた白いクーペがなくなっていることに気づく。
『冬の旅』――不眠と鬱を抱えた私は列車の旅に出た。上野発の列車が赤羽駅に着いたとき、男女が乗り込んできたが、それは若き日の両親だった。
読書会仲間に評判が良かったのは『告白』、すっきりしないとされたのは『情夜』、『黒い森』『同じ棲』。ただしnishinaとしては、『同じ棲』はすっきり理解できる作品であり、気に入っている。(2010.4.10記)
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by nishinayuu | 2010-07-05 22:19 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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