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『別離のとき』(ロジェ・グルニエ著、山田稔訳、みすず書房)

c0077412_10243352.jpg1919年生まれのフランスの著者による10の短編を収めた作品集。1991年の「シンメトリー」を除く9編はすべて80歳代に書かれたものだが、語り口は軽快で歳を感じさせない。ただし、言及されている人物は、シャルル・トレネ、エディット・ピアフ、モーリス・シュヴァリエなどなど、確かにやや古めかしい。特に印象に残った作品は以下の通り。
「別離の時代」――リュドヴィックは連絡がつかなくなった恋人のドミニックを探しに、列車を乗り継ぎ乗り継ぎしながら彼女の故郷であるクレルモン・フェランへ。列車に乗り合わせて強く惹かれたサビーヌへの思いを断ち切って辿り着いた先で、彼は見事にふられてしまう。パリへ戻る列車で、リュドヴィックは思うのだった。サビーヌと出会ったのが行きではなく帰りの列車だったら、と。
「あずまや」――地質学者のトマ・セルヴァがマウイ島で地質調査をしていたとき、飛行機の墜落事故があった。事故現場でトマはほとんど無傷のヴァイオリンの弓を発見する。ラジオの報道によるとその弓は世界的に有名なヴァイオリニスト、アニューシカ・シニャーコワのものだとわかり、トマの脳裏に彼女との苦い思い出が蘇る。
その他「モンマルトルの北」「一時間の縫合」などには短編小説ならではの味があり、「オスカルの娘」「その日、ピアフとコクトーが」では著者が身を置いていた世界をかいま見ることができて興味深い。(2010.4.3記)
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by nishinayuu | 2010-06-28 10:24 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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