『King Lear』(W. Shakespeare著、Greenwich House)

c0077412_8392810.jpgこの作品は1608年に出版されたもので、物語の時代はそれよりずっと前、すなわち未開で野蛮な時代に設定されている。したがって多くの登場人物たちの言動は単純・粗野で時には残虐である。末娘のコーデリアの真っ直ぐな心が読めずに怒りにまかせて彼女を遠ざけるリア王、甘言でリア王を騙したあげくに冷遇して荒野に追いやる二人の娘、文字通り自分で種をまいておきながら庶子のエドマンドの存在を唾棄するグロースター、などの言動はまさしく単純・粗野・残虐である。そんな彼らが残虐な報復を受けて悲惨な最期を遂げるのも宜なるかな、と思えてくる。
興味深いのはケントとエドガーである。ケントは自分を捨てたリア王に、エドガーは自分を捨てたうえに殺そうとまでする父のグロースターに最後まで忠誠を尽くす。エドガーの場合は切っても切れない親子の情愛、ケントの場合は主従関係のある所には普遍的に見られる頑ななまでの忠義心、ということで説明がつくかもしれないが、とにかくこのふたりの献身ぶりは並ではない。
さらに興味深いのはエドマンドで、邪悪な心を抱くのにはそれ相応のわけがあるという点がリチャード3世やイヤーゴゥの場合と異なる。ゴネリルとリーガンという王の娘二人が魅了されてしまうほどの美丈夫でもあり、ただの悪人として片づけてしまうのは惜しい。多くの登場人物の中でただ一人、「単純ではない」人物なのである。
(2010.2.23記)

☆画像はArdenのものです。
☆シェイクスピアの戯曲37作品のうち、残るは11編(3編は翻訳でなら読んでありますが)となりました。今のペースだと死ぬまでに全部読み切れないかも……。
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by nishinayuu | 2010-05-14 08:39 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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