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『二つのプラハ物語』(リルケ著、石丸静雄訳、彌生書房)

c0077412_10415699.jpg1890年代のプラハを舞台にした二つの物語が収められている。
「ボーフシュ王」の主人公であるボーフシュは、純朴なスラブ人種を代表する人物で、支配者であるドイツ人を憎むということを知らない。もう一人の重要な登場人物であるレーツェクは社会主義的イデオロギーを信奉する大学生で、反ドイツに燃えている。ともにボヘミアへの深い郷土愛を抱く二人であるが、愚鈍といってもいいほどに謙虚で穏やかな人間と、知的で闘争的な激しい人間が、同志になれるはずはなかったのだった。
「あにいもうと」は夫に先立たれたワンカ夫人と息子のツデンコ、その妹ルイーザの物語。ここにも上記のレーツェクがアジテーターとして登場する。若い情熱に燃えるワンカは、自分の意志に君臨する力のような物に引かれてレーツェクに近づき、やがて離れられなくなり、結局身を滅ぼしてしまう。
後半は残された母と娘の物語。君臨する母とか弱く頼りない娘という構図が、下宿人としてドイツ人の青年・ラントを迎え入れた頃から変化し始める。物語は、ドイツ人とチェコ人の支配と被支配という敵対する関係からの脱却を暗示するような場面で幕となる。(2010.2.16記)

☆本の画像が見つからなかったので、リルケの肖像画(作者未詳)を載せました。
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by nishinayuu | 2010-05-05 10:42 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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