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『あるかなしかの町』(エマニュエル・ボーヴ著、昼間賢訳、白水社)

c0077412_17242332.jpg著者は1898年にパリで生まれたユダヤ系フランス人作家で、1945年にパリで病没している。
この作品の原題はBécon-les-Bruyéresで、パリ郊外の町ベコンについて語る文章と、ところどころに挿入された白黒写真からなる。深い赤の布製の表紙に白いカバー、上下左右に余白をたっぷり取った、1ページに11行という贅沢なつくりで、読み捨てるのがはばかられる、あるいは読み捨てを許さない、といった趣の本である。文章も味わい深く、読んでいるうちにパリのサン・ラザール駅から私鉄に乗って10分の、取り立ててどうということもない町が、なにか愛おしく思われてくる。いいものに出会った、と思わせてくれる作品である。
ところで、この本のタイトルがちょっと引っかかっている。原題のベコン=レ=ブリュイエールではわかりにくいのでこうした、と訳者は言っているが、どんな題を付けようとそれだけで中身を推察するのは無理というもの。むしろ原題のままのほうがいろいろ想像を膨らませることができていい場合もあり、この作品もそれに当たるのではないだろうか。(2010.1.23記)
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by nishinayuu | 2010-03-30 17:24 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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