『スフィンクスの嘆き』(三宅幸夫著、五柳書院)

c0077412_11142655.jpg「バッハの生涯と作品」というサブタイトルがあるからいいものの、どんな内容の本か見当が付かない不思議なタイトルである。これについて、音楽学者、音楽評論家である著者は「あとがき」で次のように解説している。
「スフィンクスは人々に謎をかけては、解けない者を食い殺していたという。筆者は子どもの頃から現在に至るまでバッハの音楽に深く傾倒してきたが、(中略)いつも謎をかけられているような、ある種の不安感を覚えずにはいられなかった(中略)なぜ謎が解けないのか、あるいはなぜ謎を解こうとしないのかという嘆きの声が、つねにバッハの音楽の行間から聞こえてくる気がしてならないのである」
第一部「度重なる転職」ではバッハの伝記研究をもとに、バッハの近大芸術家としての意識が解明されている。(肖像画に見られる大成した大人物然としたバッハにも、将来の見えない少年時代、血気盛んな青年時代のあったことがわかって興味深かった。)
第二部「音の集積回路」ではバッハの作品が持つ集約性・重奏性に関する論述が繰り広げられる。(かなり専門的な内容なので、難しいところは飛ばして読んだ。)
第三部「鏡像としてのバッハ」には18世紀から20世紀までのバッハ受容の歴史が綴られている。この中の第13章はタイトルと同じく「スフィンクスの嘆き」と題されており、ワグナーがバッハの[フーガ嬰ハ短調]を「スフィンクスの、あるいは消えゆく神々の、あるいは人間が誕生する以前の、自然の優しい嘆き」と形容した、とある。(2010.1.20記)
☆「バッハの音楽に深く傾倒している」著者による「バッハの音楽に深く傾倒している」人のための本でした。とくに「バッハの音楽に深く傾倒している」わけではない私も、思いの外楽しく読みました。
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by nishinayuu | 2010-03-21 11:14 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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