『不信時代』朴景利

c0077412_22485487.jpg『불신니대』(박경리著)

2008年に世を去った韓国の作家・朴景利が1975年に発表した短編小説。実体験を下敷きにして社会の不条理を告発した作品である。なお、他の作品のタイトルは、右の欄にある「韓国の著名人」→ㅂ→박경리でご覧ください。

主人公・眞英の夫は、「朝鮮戦争」が始まって間もない1950年の9月に爆弾に当たって死んだ。それは夫が、内臓が飛び出して死んでいる少年兵を見た、と眞英に話した翌日だった。次の年、北側の勢力が南側を圧倒したため、眞英は3歳の息子を背に、母親とともにソウルを逃げ出す。爆撃に晒されながらの逃避行だった。
戦争が終わり、荒廃したソウルに戻ってから数年後、9歳になっていた息子が死ぬ。眞英が内臓の飛び出した少年兵の夢を見た翌日のことだった。息子の死は無惨だった。不誠実な医者による不手際な処置のせいだった。
眞英の胸には息子を無惨に殺した医者、薬の量をごまかす医者、2種類の液をよく攪拌せずに注射しようとする看護婦、果ては免許のない偽医者など、医療関係者に対する不信が渦巻く。叔母の勧めで教会に行ってみても違和感しか覚えず、叔母や周りの信者たちの行状を知って、眞英はいよいよ違和感を募らせる。そして今度は母の希望を入れてお寺を訪ねるのだが、そこで眞英の宗教への不信感は決定的なものとなる。(2010.1.15記)
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by nishinayuu | 2010-03-15 10:58 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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